【しなやかに生きる】勝ちを急ぐときほど勝ちが遠のく-赤ちょうちんの大将のこと-

      2017/11/23

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

自宅から遠く離れた夜空に打ちあがる
煌々とした花火を眺めると日本の夏だぁと感じます。

蒸し暑い日が続きますが、この夏独特の気候が花火を
美しく演出している大事な要素の1つなのかもしれません。


ところは変わって京都三条。

三条大橋近くの赤く光る赤ちょうちんの大衆居酒屋。

暖簾をくぐって年季の入った店内に入ると
何とも言えないごちゃごちゃ感。

けっして小奇麗だと言えないが
なんだか不思議な居心地良さが漂っている。

小さな店の中をグルリと囲むようにカウンターがあって
その中の厨房で大将が一人、料理と接客をしている。

「いらっしゃい!」

にこやかな笑顔でぼくを迎えてくれる。

そんな三条大橋の赤ちょうちん。

Photo credit: yasuoogle via VisualHunt.com / CC BY

「売上を意識する日ほど客がけえへんのや。不思議なもんやな」

ぼくが20代の頃、よくそのお店に連れていってくださった方がいて
その方を通じてその大将と知り合った。

「今度、京都で個展するんです」

大将に言うと

「へぇ、そうなんや。
じゃぁ、たくさんお客さん来てもらえるように
カウンターに案内状貼っとくわな」

彼とは親子くらいの年齢差で、
お店で会うことがほとんどだったが、
同じ滋賀県出身ということもあったからなのだろうか
ぼくは彼のことを好意的に思っていたし、
きっと彼もぼくのことを気にかけていてくれたのだろう。

京都で彼と一緒に飲みいったときのことはよく憶えている。

2011年、ぼくがドイツに行く直前、自宅で開催した
「大黒貴之彫刻展 渡独以前」の際には
京都から近江八幡まで駆けつけてくれた。

「今日は売上を上げるぞ!とか
自慢の一品を作ったからこれはよく出るぞ!って
息巻いた日ほど売り上げ上がらへんねんなぁ・・・
でも肩の力を抜いて楽な気持ちの時ほどよく出るんやな。
不思議やな」

大将がカウンター越しの厨房から
そう、ぼくに話してくれた言葉をしばしば思い出すことがある。

「勝ち」を急ぐときほど「勝ちが遠のく」
そのような言葉を最近聞く機会があった。

集中しながらも肩の力を抜いてリラックスをしている
「ちょうど良い緊張感」を保つことが大事なのだろう。

別の言い方で
それは「しなやかな状態」とも言うのかもしれない。

制作、普段の生活、人間関係、思考など、
この「しなやかな状態」で実行できることを
目下、自分の心がけにしている。

人生の酸いも甘いも見てきた赤ちょうちんの大将。

お店のような何とも言えない心地良い笑顔とその口調。

今はもう遠いあちらの世界に逝ってしまったが、
何か気が焦っているときや勝ちを急いでいるとき、
カウンター越しからぼくを見る
大将の笑顔が目の前に浮かび上がる。

「大黒くん、そんな力(りき)まんと、
もっと肩の力抜きはったらどうや?」

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

Author by gross-schwarz

プロフィール定型文一括

ご質問・ご意見・作品資料
プロフィール
彫刻
ドローイング

Facebookページのフォローしていただければ嬉しいです!

Instagram

- Instagramもやっています -


人気記事 5選

1
アートは自由がいいのか?ルールがあるほうがいいのか?日本と世界の現代アートの環境は乖離している。

アートは自由だと言われますが、大切なことは発想や想像の自由であって、なんでも有りの自由だということではないと思います。ルールがあるからこそ面白く、また感動することがあるのです。

2
ギャラリストとアーティストは二人三脚で新しい音色をつけていく

作家とギャラリストの本当に良い関係は、近すぎず、そして遠すぎず、お互いをリスペクトし、信頼、感謝できるものでなくてはなりません。ベルリンのギャラリーと仕事をしながら想うこと。

SC-preview-04 3
ベルリンのギャラリストから学ぶことと日本の貸画廊システムについて

現代アートの世界で制作した作品を発表する場所の一つとしてギャラリーが挙げられます。しかし日本とドイツのギャラリー事情は違うようです。美術に携わる人たち以外にはあまり知られていないこの事情を書いてみたいと思います。

renmen Ensemble (outdoor), 2015, Variable ,Mixed Media  (Land Art Schlosspark Wagenitz) Photo : Takayuki Daikoku 4
「圧倒的な異質性」が現代アートの一つのキーポイントになる

現代アートは、対象物をうまく描けるとか具現化できるかというところで勝負をしているのではなく、キーワードの一つに「圧倒的な異質性」を押し出すことができるかどうかが一つの勝負所ではないかと考えています。

ギャラリスト 5
現代アートにおいての重要な職業ギャラリスト。ーベルリンのギャラリストとの交流からー

現代アートのギャラリストとはどのような仕事をするのでしょうか。ベルリンのギャラリスト、H.N.セミヨンさんとの交流から垣間見たぼくの一場面です。

 - 人生