現代アートではなく、建築や映画界の環境は世界と比べてどうなのだろうか

      2017/11/23

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

ずいぶん前になりますが、2011年2月1日の朝日新聞の文化面で
「建築家、海外で跳ぶ 高まる評価、少ない国内建設」
という記事がありました。

日本の建築家たちは、ポンピドーセンターの分館やルーブル分館など、
世界の重要な建築の設計をしています。

日本の著名な建築家の仕事は多くの割合が海外であるといいます。

しかし裏を返せばそれだけ国内の仕事が少ないということでもあります。

建築界を取り巻く環境は他の芸術界とも似ている

ベルリン・ハンブルグ駅美術館photo:Takayuki Daikoku

新聞記事はどのような内容だったのでしょうか。
少し引用してみます。

~以下引用~
建築評論家の馬場璋造さんは「日本の建築は国際的に評価されているのに、
その文化性や才能を求める意欲が自治体に乏しくなった」と嘆く。
ポンピドーセンターの分館を設計した坂茂(ばん・しげる)さんも
「海外からは、いきなり仕事の依頼や指名コンペへの招待があるが、
日本では人間関係を築かないとなかなか仕事がこない」と話す。

また、アジアや欧米では、政治家や首長の意識も違うという。

一方、「日本では、建築を社会や市民が考える風土が十分に育っていないのに、
建築家がデザインの抽象性や理論を訴えても、社会から遊離するだけ。
もっと社会に入っていく論理をつくらないと」
建築家の側にも問題があった、と指摘する建築家もいる。
~ここまで~

ざっと記事の一部を引用してみましたが、
日本の美術業界にもそのまま当てはまるようです。

ただ、この問題はものすごく難しいとも思います。

おそらく子供の教育段階から芸術を日常的にしていかなければ
何が良いのか良くないのかすら判断ができません。

フランスでは、幼稚園の遠足でルーブル美術館にいって
絵を鑑賞し子供たちの意見を話させるそうです。

業界のターゲットがまだまだ国内にしか向いていないと
言われている音楽や映画では、まだ子供のころからの体験があります。
ですので、その経験は自分で判断することにもつながっていきます。

それでもこのままでは日本映画界はガラパゴス化になってしまうと
警鐘をならす監督もおられます。
参考記事:「邦画大ヒットの年に是枝裕和監督が「日本映画への危機感」を抱く理由」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50258

昨今、日本の各地で現代アートの芸術祭が行われるようになり
多くの人たちが作品を鑑賞する体験をするようなってきているのも確かです。
これに加えて、例えば自分の部屋やオフィス、会社のロビーなどの
日常空間にも現代アートの作品が増えてくると
さらにその体験が増していくことになります。

いずれにしても芸術が日常的になるには、
長い時間をかけてジワリジワリと浸透させていくしかありません。

先の新聞記事は2011年のものですが、
2016年現在ではどのくらい国内外の乖離は縮まっているでしょう。

もしくは芸術文化など必要ない社会になっていくのでしょうか。

今の政治や教育を見ているとそんな方向に向かっているようにも映りますが・・・
参考記事:「美術も美術教科さえも、もはやなくなっていくのでしょうか」

今では世界的に有名になっている相撲。それは当然、相撲のルールがあります。
そして野球には野球の、科学界には科学界のルールがあるのように
アート界が世界に目を向けるのならば、アートの環境を世界の基準に
合わせていくことが必要になる
とぼくは考えています。

ここでいうルールとは自由な発想や創造、精神を束縛するというものでありません。

「土俵を同じ」にするという意味です。

そのうえでの自由だと思うのです。

ルールなき自由は、精神や創造、発想の自由でなく
それはやがて無秩序になってきます。

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

参考記事:「アートは自由がいいのか?ルールがあるほうがいいのか?日本と世界の現代アートの環境は乖離している。」

Author by gross-schwarz

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