彫刻家は自分の世界を見せることができる仕事場(アトリエ)を持とう!

      2017/02/21

彫刻家の大黒貴之です。

芸術家は制作活動をすることが仕事ですので、
自分の時間をしっかり確保して、
制作ができる空間を持つことはとても大切です。

2001年にドイツへ行った第一次渡独の時は
スーツケースに入る分だけの荷物を
詰め込んで日本を飛び立ちました。

その中でも忘れなかったのは、
自分で作ったA3サイズの作品集でした。

この作品集がベルリンで作品を発表する
唯一のきっかけになると思い
全く分からないドイツ語で
会う人会う人に作品集を見せて
「ドイツで展覧会をしたいんだ」
と声をかけていました。

「ドイツに来たばかりでしかも
ドイツ語も分からない状態でどうやって
展覧会なんてするんだ?」

そう思う人がほとんどでした。

そんなある日、通っていたドイツ語の語学学校の先生に見せたら

「ベルリンでギャラリーを運営している
知り合いがいるから紹介してあげるわ」

と言ってくれました。

それが突破口になり
2002年秋、初めての海外展覧会に至ることになります。

4人の作家がピックアップされたグループ展でした。

↑第二次渡独の時の仕事場。フリーザックという小さな街の端にある一角を貸りていました。

ベルリンで初めての展覧会に至る紆余曲折

実はこのグループ展にたどり着くには
紆余曲折がありました。

語学学校の先生の熱心な紹介のお蔭で
グループ展への参加がついに決まりました。

しかし、展覧会の詳細について
ギャラリー側から何の連絡もないので、
ある日ギャラリーを訪ねてみました。

ギャラリーはあいにく閉まっていました。

入り口に次の展覧会の予定が貼っていました。

その紙をよく見ると参加するはずの
グループ展のメンバーにぼくの名前がなかったのです。

それを見たときには、
言葉にできないほどのショックでした。

展覧会が決まり、ノミなどの制作道具をはるばる
日本まで取りに帰り、
彫刻の素材である木を確保するのに
ドイツ人の知人にトラックの運転を頼んで
ベルリン郊外まで取りにいき、
そして、制作するための工房を
やっと見つけてまさに制作の真っ最中だったからです。

そのギャラリーから自宅まで1時間かけて
オロオロと歩いて帰りました。

途中でよくわからない電話会社の契約に
ついサインをしてしまって
「あ~、なんてことしてしまったんだ!」と
さらに落ち込み…と負のスパイラルに
落ち込んでいくようでした。

ギャラリーを紹介してくれた
語学学校のドイツ人の先生にそのことを言うと

「それはおかしいわ。私が連絡してあげる」と。

時を同じくして、ぼくが制作していた工房で
仕事をしていたドイツ人アーティストのセミヨンさんに

「おい、タカユキどうしたんだ?
今日は、えらい落ち込んでいるなぁ」

と声をかけられたので、事情を話すと

「それじゃ、ぼくの方からもそのギャラリーに連絡してあげるよ」

そのギャラリーの運営者は
その時、ウアラオプだったようで
なかなか連絡がつきませんでした。

そしてようやく、連絡を取ることができて
やれやれ、やっとグループ展への参加が正式に決まったわけです。

作品集だけでは弱い。特に彫刻は実物の作品をみてもらうことがとても大切

連絡を取りついでくれた2人のドイツ人には
有り難い気持ちが一杯でした。

一方で、グループ展のメンバーに
入っていなかったことへの悔しい気持ちもありました。

しかし、その時にわかったことがありました

それは実物の作品を見せないと駄目だということでした。

ギャラリーのドイツ人は、ベルリンにやってきて間もなく
仕事場もないし、実物の作品もない状態で
はたしてぼくが本当に作品を出品できるのかという
疑問符が付いていたようです。

そして、制作をしていた工房に
彼女がやってきて実際に作品を目の当たりにすると
即答でOKとなったのです。

この時、作品集だけでは相手に伝わるエネルギー伝導は
弱いのだと痛感しました。

それは第二次渡独の時も同じでした。

セミヨンさんが開いたセミヨン・コンテンポラリーの
所属作家になったのは自分の仕事場が見つかった後でした

ちなみに、その仕事場が見つかるまでに
1年半の時間を要しています。

その経験から、作家が仕事場を持つ重要性が
身に沁(し)みて分かったわけです。

2016年の秋に約5年半の第二次渡独に一旦区切りをつけ
滋賀県に帰ってきました。

今、制作の拠点になる仕事場を改装中です。

近所のおじさんとぼくの2人だけで改装を
行っているため、少しずつの進行具合ですが
まもなく完了します。

素晴らしい仕事場になりますよ。

先ずは、この仕事場で作品をみっちり制作し
誰がいつ来てもぼくの彫刻やドローイング、
ペインティングなどの作品を見せれる状態に
もっていきます。

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

Author by gross-schwarz

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