アート作品はあなたの生活をどのように変えるのか

      2017/11/23

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

日本では印象派などの有名なモダンアートや古典絵画などの
展覧会を実施すると長蛇の列ができます。
それくらいアートは人気があります。

何時間も並んで作品を観るくらいアートに興味のある人が多いのですが、
作品の購入となると奥手になってしまうのもまた確かなようです。

現代アートになるとなおさら顕著にそれを伺うことができます。

アート作品を買う意味は一体なんなのでしょうか。

デザインや工芸などは人が生活する上で欠かせない用途、
つまり「使われること」が先ず備わっています。
それにプラスして美を追求したものになっています。

それに反して、アートはそれ自体に利便性はありません。

ですから生活するうえで特に欠かせないものではありません。

しかし、アート作品は人の生活を変化させる
何かしらの不思議な力が宿っています。

それはどういうことなのでしょうか。

今回はそのことを少し考えてみましょう。

人は未知なものに対して「不安」になる

ドローイング-michael_kutschbachmichael kutschbach(マイケル・クッチュバッハ)
ドローイング, 2011, 紙に鉛筆, 32.2×26.3cm
Photo:Takayuki Daikoku
Daikoku collection

ぼくもアート作品を小品ではありますが30点ほど所有しています。

自身の作品と交換をしてもらった作品もありますし、
お金を出して購入した作品もあります。
もちろんどれも自身の目で観て気に入った作品ばかりです。

現代アート作品を、いざ生活空間の中に置くと異質なものであると気づきます。

床の間に飾る掛け軸やレプリカのポスターや風景画とは何かが違います。
これらの作品は、観ている人に安心感を与える要素が強く、
観ていて何か心地よい安心さを与えてくれます。

一方現代アート作品はその安心感はありません。

なぜなら鑑賞者が持っている既成概念からジャンプしているからです。

人は自分が持っている体験や経験から逸脱するものに対しては
不安になるように潜在的にインプットされています。

太古の昔、私たちの先祖である哺乳類は常に怯えていました。
食うか喰われるかの時代です。
木やしげみの中から、自分を襲ってくる未知の気配には常にアンテナをはっていました。
未知のものに対して、未然に防御することは生存本能なのです。

特にムラ文化が強い日本人は外来物に対しての抵抗感が強いと言われています。
けれども実際、日本の歴史はそのように形成されてきましたし、
それでうまくいっていたのですから、それはそれでいいのです。

ここでは人は未知のものに対して不安になるということを一つ知ってください。

同時に人は未知なものに対して「好奇心」をも抱く

キオスクショップ H.N.SemjonH.N.Semjon(H.N.セミヨン)
インスタレーション・スカルプチャー 「KIOSK」に使用された看板
1996, ベルリン
Photo:Takayuki Daikoku
Daikoku collection

現代アートが異質なものだと感じるのはギャラリーで観るより
自分の家や部屋に置くとなおさらそれがよく実感できます。 

先の安心の美は、同時に過激さや好奇心をも求める人の脳に対して逆行しています。

人は安心を求める一方で異質なものや未知なるものを求めているのです。

その衝動が、宇宙や科学、考古学、歴史、人生の追究などに向かわせるのです。
その探求心がなければ、人類の発展は成しえませんでした。

現代アートの異質性は空間の雰囲気を間違いなくガラリと変化させます。

そして素晴らしい作品はそのガラリ感が時間とともに色あせるのではなく
むしろ新鮮さを増していきます。

自分の空間に作品を飾ると毎日のように作品を見ることになります。
毎日ジッと見なくてもいいのです。チラチラ観るだけでもその作品と対話しているのです。
その対話は、作品を通してそれを制作した作家との対話でもあるのです。

美術館で鑑賞される作品は、
自分の好きなミュージシャンのコンサートに行くようなものです。
一方で、その音楽を私たちは自宅で聴き、ともに時間を共有したいと願います。

自分の空間に作品を置き対話することはそのようなこと同じです。
それが作品と対話しながら鑑賞をするということなのです。

そして購入した作品の作家とリンクできます。

この独特な感覚は、作品を自分の空間に飾ってみないと本当にわかりません。

身銭を切るとなると真剣に作品を観て選ぶでしょうし
そのような作品は必ず大事にします。

そのことによって、現代アート作品のことを知ることができ
また初めて作品と向き合い鑑賞できる体験にもつながるのです。

一度作品を購入してプライベート空間に飾ってみると
「現代アートってわからないんだよねぇ」から
「おっ、何かいいねぇ」にきっと変わっていきますよ。

まとめ。-現代アートは生活の何を変えるのか-

1.現代アートは安心を求めるものではない。それ故既成概念からジャンプできる
2.その異質性は日常の生活空間をガラリと変化させる
3.美術館では味わうことができない自分と作品との対話が始まる
4.制作した作家とリンクできる。
5.それによって自身をも喚起させることができる
6.素晴らしい作品は消費されず、長い時間をかけて楽しむことができる

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

参考文献

↑精神科医であり、日本の現代アートのトップコレクターにも入る高橋龍太郎氏の著書。
コレクターとしての経緯や
現在の日本現代アートの状況についても言及されています。
2500点ものコレクションをしている方の貴重な言葉。是非、ご一読を!

Author by gross-schwarz

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