物事を残していくのは他者。ただし歴史の全てが真実とはいいきれない

   

彫刻家の大黒貴之です。

前回の続き「本物とは」を考えるシリーズです。

以前「本物とは?本当に良い作品は消費されず時代を超えて残っていく 」
という記事を書きましたが、すこし言葉足らずなところがありましたので補足します。

本物については、古今東西で語り継がれてきているお題ですが、
ぼくは「こういうモノが本物なんだ!」ということよりも、
どうのようにして、そのモノやコト、或いは思想でもいいのですが、
何十年、何百年という時を経て、今にも(そして未来にも!)
残っているのかというところに興味があるのです。

なぜかというと、「本物とは何か?」という問いは
人それぞれの主観によって変わってくるからです。
Aさんにとって、デュシャンは本物だけれども
Bさんにとっては違うかもしれません。
同じようにBさんにとってマリリン・モンローは本物であっても
Aさんにとっては違うかもしれません。

つまり、これが本物だ!否、違うとなると
どこかで喧嘩になり、平行線のままになってしまいます。

ですので、「本物とは何か?」という問いから
「どのようにして本物になっていくのか?」という問いに転換してみましょう。

物事が時代を超えて残っていくのはそれを守り続ける人がいるから

物事を残していくのは他者であるPhoto via Visual hunt

時代を超える物事は、アート作品に限らず、
例えばお寺が家事になった時でも僧侶たちが命がけで守ってきた
仏様や代々に渡って引き継がれてきた家宝、
人々を魅了する秘伝の味、何百年にも渡って
多くのバイオリニストたちに引き継がれてきた名器や音楽、
源氏物語や北斎など現存していりもので多数あります。
また、短歌でも読み人知らずとか仏像や絵などでも
〇〇伝とか作者不詳というのがあります。
ですので、時代を超えて残っていくものは有名無名ではないのはわかります。

それでは、どうのようにして時間を超えて、
しかも、自然災害や戦争などの人災なども発生する中で、
今に(そして未来にも)受け継がれていくのでしょうか。
それは時代を超えて誰からから誰かの手によって受け継がれてきたからです。

確かにマーケットに乗る作品はすべてが良いとは思いません。
ピカソだって生涯に3万点作品をつくったと言われていますが、
歴史的に位置付けられている作品はその3万点全てではありません。

例えば、ぼくが自分のアトリエで人知れず
誰にも見せないで作った作品があるとしましょう。

その作品のことは誰も知らないわけです。
例えばですよ、ぼくが死んからも誰にもみられないように
どこかに隠しておくとしましょう。

そうすると、その作品って残っていくとはぼくには思えないんです。
いや、ぼくが死んでから誰かが見つけて、
残っていくということも考えられますが、
それも誰かが発見して他の誰かにまた紹介していくという
連鎖が必要になるんです。

つまり、次世代にバトンは渡していくのは、
そのモノやコト或いは思想を生み出した以外の他者なのです。

作品がどのようのして残っていくのか。

それは他者が残していく。

そして残っていかないと後世の人の目に触れることもありません。

ただし、歴史で残っていくものが全て真実かどうかまた別の話です。
なぜなら、歴史を構築していくのはその時代の弱者ではなく強者だからです。

その真実が伝説としては残っていき、
それがある時代に再び発生することはあるかもしれませんが・・・

この点でいうと最初に書いたように芸術作品は
読み人知らずや作者不詳などの例があるように
後世になってから誰かに発見されて、
その作品が表舞台に立つということも考えられます。
大変ミステリアスさを感じますね。

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

Author by gross-schwarz

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