【メッセージが届くこと】それは意外なプロセスで相手に伝わることがある

   

彫刻家の大黒貴之です。

自分が発したメッセージは一体どのようにして相手に届くのでしょうか。

直接、届くこともあれば、届かないこともありますよね。

それは自分の想定とは違うプロセスで届いていくのかもしれません。

ぼくがまだ大阪に住んでいた時、
10秒ほどの時間の中で起こったある不思議な出来事です。

Photo via Visual Hunt

意外なプロセスで届くメッセージ。終電間際、駅の改札にて

制作の仕事がひと段落して大阪市内から終電で帰宅の路についた時の話です。

ぼくは地下鉄から乗り換えのため私鉄線の方へ足を向けていました。

終電に乗り遅れないように、自分も含めてみんな急ぎ足。

私鉄電車へ向かうとき、地下鉄のプラットホームに向かう
男の人が改札機をくぐろうとしていました。

そのとき、彼が財布と一緒に持っていた定期入れのような
小銭入れのようなモノを落としたのが見えました。

ぼくはそれを拾い上げ「落ちましたよ!」と。

周りは、ゴッタ返しいち早く電車に乗ろうと急いでいる人たちばかりだ。

声が聞こえないのか、彼は気づかない。

もう一度「落ちましたよ!」と声をかけましたが、
その声も彼には届きませんでした。

彼はすでに改札の向こう側に渡り、さらに歩いていきます。

ぼくからは4メートルは離れていました。

その落とし物を彼に向かって投げてみようとも思いました。

もう一度、呼んでみようと試みた刹那、
不思議なことに、彼よりさらに前方で歩いていた人がぼくの声に気づいたのか、
落とした男の人に「落ちましたよ!」と
まるでぼくの声を代弁するように伝えています。

そこでようやく落とし物をした男性は、何かあったのだと気づきました。

しかし、ぼくからはすでに5メートル以上は離れています。

ぼくは改札機の手前、彼はすでに改札機をくぐった向こう側。

彼に向かって落とし物をを投げようとした時、
ぼくの隣の改札機を通り抜けようとした人が、
ぼくの手から、その落とし物をスッと取り上げ、
落としたその男の人に渡してくれたのです。

手元に落とし物が戻った彼は、ぼくに目を合わせ「ありがとう」と。

「落ちましたよ!」

と放ったぼくのメッセージは、
最初その男の人には届きませんでした。

しかし、他の誰かがぼくの声を聞いて彼に伝え知らせ、
ぼくが拾ったものを、また他の誰かが手を伸ばし渡してくれたのです。

終電間際、溢れかえる改札のこちら側とあちら側。

全く知らない4人のほんの10秒ほどの出来事でした。

彼も、声を伝えてくれた人も、落とし物を手渡してくれた人も、ぼくも
その後、何事もなかったかのように再びそれぞれの帰路につきました。

ぼくは、直接それを手渡したのではなかったのです。

否、渡せなかったと言った方が正しい。

けれども、人から人へ間接的に彼にそれが届いたのです。

メッセージが伝播し、相手に届く瞬間を垣間見たようでした。

あれから10年ほどが経ちますが、
あの瞬間の光景を今でもよく記憶しています。

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

Author by gross-schwarz

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