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彫刻家の大黒貴之(@takayuki_daikoku)です

今回はネオ・ダダのお話をします。ネオ・ダダは1950年代末にアメリカで起こったアートの動向です。抽象表現主義の後の潮流に乗った動向で、第一次世界大戦時にヨーロッパで隆起したアート運動「ダダ」に類似していることから、「ネオ・ダダ」という概念を当てはめられたと言われています。

今回は、ネオ・ダダの有名な作家としてロバート・ラウシェンバーグとジャスパー・ジョーンズを挙げてみましょう。

ジャスパー・ジョーンズの旗
Photo credit: pestoverde via Visual hunt / CC BY

旗・数字・剥製・タイヤなど初めて絵画に日常的なテーマや物質を取り込んだ

ネオ・ダダの表現の特徴としては、身近にある日常的なものをモチーフにしているところです。
そして日常品や工業製品を作品の中に取り込んでいます。

例えば、複数の既製品や新聞、雑誌の切り抜きなどのイメージを流用した表現技法である「アッサンブラージュ」や「コラージュ」が多用されています。同時にネオ・ダダは、抽象表現主義の次の潮流に位置しており、彼らの作品には抽象表現の特色が強く残っています。

ラウシェンバーグは、そのコラージュ技法を発展させました。そして日常的な既製品を絵画の中に流用し「コンバイン・ペインティング(結合する絵画)」と名づけました。

ロバート・ラウシェンバーグ
Photo credit: librarianfinsen via VisualHunt / CC BY-SA

1955年に発表された「モノグラム」という作品を見ると本来は壁に掛けるはずのキャンパスを地面に直置きしてその中心に雄羊の剥製とタイヤが設置されています。こちらのサイトに「モノグラム」の写真が掲載されています。アメリカ的な即物主義(物質的に形のないものには価値がないという考え)と抽象表現主義を彷彿とさせる絵画空間が同居しているのがわかります。

ジャスパー・ジョーンズは、旗や数字など日常的なモチーフを作品の中に取り入れました。

ジャスパージョーンズ 的
Photo credit: cliff1066™ via Visual Hunt / CC BY

彼は日常の中にある「アメリカ国旗」や「的」「数字」などをモチーフにしています。

また、蜜蝋を使用した技法によって、抽象表現にみられるような筆跡を残しながらも旗や的などの平面的な記号を用いています。記号の平面的要素を取り込むことによって筆跡のタッチから表れる絵画の空間性や奥行を否定しています。それらの作品から伺え知ることができるのは、日常品の既製品や廃材でさえも、キャンパスに描かれた絵画と同じ一つの物質に過ぎないということを示唆しているのです。

抽象表現に対する反発。ダダイズム

「抽象表現とかなんとか崇高なこと言っているけどさぁ、そんな高飛車に構えた「絵画のための絵画」も人が生活の中で使っている日常品や既製品も、一つのモノなんじゃないの?だから俺たちが目の前にある旗や数字を描いたり剥製とかタイヤとか日用品を絵画に中に取り込むことはそれまでの概念にあった絵画となんら変わりないんだよ。」

つまり抽象表現主義が主張していた究極の絵画とは?というアート論に対して、そんなものは日常と同じモノなんだよ!というアンチ・アートを提唱したのです。

このネオ・ダダの2人の作家が日用品や既製品を絵画の中に取り入れたことは次世代のポップ・アートコンセプチュアル・アートへの道を切り開く起点にもなりました。

ネオ・ダダのまとめ

1.ネオ・ダダとは、ヨーロッパで起こったダダの特徴に類似している。
2.絵画の中に旗や数字のような日常的なモチーフや既製品や廃材などの日常品を取り込んだ。
3.抽象表現主義の特色を帯びている。
4.同時に抽象表現主義へのアンチ(反発)でもある。
5.抽象表現主義→ネオ・ダダ→ポップアートコンセプチュアル・アートという潮流ができていく。

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