目に見えるものと目に見えないもの。大切なものほど目に見えない

      2017/08/13

彫刻家の大黒貴之です。

お金の使い方はとても難しいものです。

以前に書いた記事で
箱物と見栄について書きました。
関連記事:【見栄を張る】20世紀の「箱物」から21世紀の「中身」へ移行していこう

お金を使う上で最もわかりやすいのは
物質的なものを所有することです。

家屋だけではなく、門構えや庭などが
立派だということは、なぜか威厳あるように映ります。

それは着ている服装や時計、車などにも
ピッタリ当てはまりますよね。

人は見た目の9割で判断するという本が
話題になりましたが、おおよそ当たっていると
ぼくは考えています。
Photo via Visualhunt

 

目に見えないものの大切さって何だろう?ぼくが聞いたとても感慨深い話

世の中は資本主義社会で
目に見えないヒエラルキーに覆われているようです。

ですので、同じヒエラルキーの人たちは
同じような出で立ちをするのは必然なのかもしれません。

例えば、保険会社のセールスマンが
なぜ高級統計やスーツをまとうのかというと
それによって、心理的に有利に立つことが
できるからだと言われています。

人の心理は不思議なもので
高級なものを身につけていたり、
お金持ちだと分かるとその人は自分よりも
何か上の立場にあるように思えてしまうようです。

人は中身で勝負だと言われるかもしれませんが
知らない間に見た目で判断していることは多々あるのです。

昔話にもこのような話があります。

ある日、怪我をした乞食の男がやってきて手当を頼むと
意地悪爺さん婆さんは「あっちへ行け」と言いました。
隣の優しい爺さん婆さんが「こりゃ、大変なこっちゃ」と
手当をしてあげると実はその男は神様でした。

そのような話もあるくらいですから、きっと昔から
人は見た目で判断していたのでしょう。

現在でも、学歴や経歴によって
仕事の量が変わるというくらいですから
今も昔も人の心理はほとんど変わっていない
ということがわかりますね。

ところで、最近ある人と話をしていて
考えさせられたことがありました。

商売で成功して、自分が理想とする
立派な自宅を建てた人がいました。
その家の周囲には、木材と漆喰、瓦で
つくられた立派な塀も備え付けました。

当時、家の周りにそのような塀がある家は
その辺りでは珍しく、その人にとっては
大きなステータスだったのでしょう。

やがてその人にも孫が生まれ、
家族三世代で暮らしていました。

時代が流れ、その孫が成人を迎えたある日のことです。

「おじいちゃん、この大きな家、建てたのはいいけど、
これどうすんの? ぼく、この家には住まないよ」

そのようなことを言われたそうです。

その人は、当時、その自分が建てた立派な家を
きっと鼻高々に思っていたとぼくは思います。

けれども、その立派な家に
今は孫も住んでいませんし、その本人ももう住んでいません。

その家を管理維持するにはお金がかかります。
ホイホイと取り壊すこともできませんし、
簡単に人に貸すこともできないでしょう。

その話を聞いたとき、お金の使い方の難しさや
自分の世代だけで物事を考えることへの警鐘にも感じました。

確かに立派な家を建てるということは
それだけ自身も努力し、人一倍頑張って築き上げた賜物なのでしょう。

しかし、未来永劫どころか孫の代までも続かないことが
この話でもわかります。

そう考えると物質的なものばかりを残すことよりも
目に見えないものを次の世代に継承していくことの
大切さをとても感じています。

個人で言えば、代々受け継がれてきた知恵や人生の教訓とか
言葉や食べ物の味や人の根底に流れる大切なものなど・・・

いわゆる名家とか何代も続く老舗を持つような系譜の人たちほど
その辺の目に見えない大切なことをしっかりと押さえているように思います。

次世代への引き継がれていくものは
金、技術、思想の3つしか残せないと言われています。
関連記事:先人が残してきた3つのもの。私たちは後世に何を残すのか

目に見えるものは、とても分かりやすく、
目に見えないものは、わかりにくい。

そうであるが故に、ものを所有したいと思う。

人生や古今変わらない人の心理は
奥深いものであると同時に
長いスパンで考えると実はとてもシンプルな
ものなのかもしれませんね。

3×SOLO exhibition view by Semjon Contemporary Berlin 2016 photo:Takayuki Daikoku

3×SOLO exhibition view by Semjon Contemporary Berlin 2016 photo:Takayuki Daikoku

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

Author by gross-schwarz

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