2016年の熱かった夏、アートインレジデンスー岩手県大船渡市盛町にてー

      2017/11/23

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

1年前の8月8日、約5年半に渡るドイツ滞在を終えて、
ドイツから日本に家族そろって帰国をしました。

今日がぼくの母親の誕生日ということもあったのでしょう、
この日、ドイツを発つ日に決めました。

ドイツから直接、帰郷をすることなく
ぼくは岩手県大船渡市という街に入ることになっていました。

ドイツから日本に帰ろうと決めた頃、
同市で開催される三陸国際芸術祭の
アート部門の作家として招聘されたからです。

この大船渡市、震災から10か月後の
2011年12月と2013年4月に訪れる機会があり、
実は初めてではありませんでした。

2011年当時は、街中が津波の被害で
どこまでが道路なのかもよくわからないような
状況だったのを憶えています。

そして2016年の夏、ご縁があって
再び大船渡市や陸前高田市を訪れることになりました。

街は少しずつ復興を始めていましたが、
津波の傷跡は残っていました。

約1か月間の滞在で、かなりバタバタしましたが、
かなり濃い時間だったなと今、振り返ってもそう思います。

下の写真はそのうちの一点で、地元の方々と共に制作した
「rennmen (outdoor)」という彫刻作品です。
高さは4.5mで、建物の2階まであります。

同市内の盛町中央商店街通りの
佐々木邸にある前庭に展示させていただきました。
本邸の洋館とそれに隣接する庭の背景が
とても良い雰囲気を演出してくれました。

展覧会は2日間だけで、姿を現していたのは48時間。

ライトアップをした夜の景色が、なんとも言えない
ミステリアスさを醸し出していました。

搬出後、滋賀県に運搬し保管していました。

今年の春に仕事場が完成し
それを機に仕事場屋内に展示しておこうと考えたのですが、
大きすぎてギリギリ入らず仕舞いでした。

とても残念に思い、
ショボンと肩と落としながらまた元の場所に保管することに。

ドイツから帰郷する間の1か月の時間で制作した作品でもあり
自身にとってはどうも引っかかりがあります。

あるドイツ人には「日本的な作品だね」と言われ、
またある日本人には「ドイツの麦畑の匂いがする」と。

そう遠くない将来、野外でまた展示をしたいと考えています。

ドイツ、ヴァーゲニッツ村の見事な自然公園で展覧会に
リンクするような今度は日本の美しい場所に展示したいと考えています。

renmen -Garden of Sasaki house, 2016, 450×95×95cm, Mixed Media, Ofunato-Japan photo : Takayuki Daikoku

renmen -Garden of Sasaki house, 2016, 450×95×95cm, Mixed Media, Ofunato-Japan photo : Takayuki Daikoku

 

エピソード renmen - 佐々木邸前庭 - キャプション全文

今回のレジデンス(現地滞在型制作)と展覧会の開催にあたり、
ご協力、そして、素晴らしい時間を共有してくださった
大船渡市の皆さまに心より感謝申し上げます。

 佐々木邸中庭に展示されているこの彫刻作品は、
当初、屋内でドローイングと共に展示する予定でした。
しかし、急遽、それも数か所による屋外展示への変更に切り替わり、
はて、どうしたものかと思案していました。

展示まで残り18日。兎に角、時間がありません。
屋外展示になると天候に耐えれる素材に置き換えなくてはなりません。
それに作品の大きさも必要になってきます。

そのような中、蔵ハウスなど成仁会グループの
利用者(おじいさん、おばあさん)、職員の方々が、
この勾玉のような彫刻を作るお手伝いをしてくださいました。

また、新聞紙が天候に耐えれるようにFRP(強化プラスチック)
を塗装するため、制作場所の提供など
全面協力してくださった羊工房さん。

「大黒さん、手伝いますよ!」と名乗りを上げてくださった方々。

また、急な話にも関わらず東京から早急に漆喰を
郵送してくださった左官職人さん。

そして、作品展示に快く場所を提供くださった
盛中央通り商店街の方々。

彼女/彼らのご協力にどれだけ前進力を注がれたことでしょうか。

2011年から5年4カ月間滞在したドイツ。

1か月前、日本に帰国し、故郷の滋賀県にも立ち寄らず、
直接やってきた大船渡市。

ぼくの作品はドイツで制作していた作品となんら変わりませんし、
スタイルが完成していますから、どこで作っても
大きく作風が変わることはないでしょう。

また、一度、美術作品をみたことで、その人の環境が
大きく変わることはそうそうないとぼくは思っています。

しかし、滞在中、彫刻を通じてつながった出会いと会話、
同じ釜の飯を食べ、共有した時間。そのような日常の何気ない行動が、
日常にホンの少しの変化を与えるきっかけになるのかもしれません。

そして、「異質性」を孕んでいる現代アート作品は、
平素の空気がやや歪んだような雰囲気を、
その場所に醸成させる装置にもなるのではないかと考えています。

そして、その行為や日常に及ぼす積極的な時間が
連綿と続いていくことによって、少しずつその場所に
変化が巻き起こっていくるのではないかと考えています。

ぼくは先にに書いたような出来事をこの土地で
自然発生的に演出してもらったように感じています。

また、この芸術祭を機に現代アートの作家や
作品に少しでも興味を持っていただければ大変嬉しく存じます。

2016年9月
大黒貴之

Author by gross-schwarz

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