アート作品とマーケット。いつまでも傍で飾っておきたいと思われる作品を

      2017/11/23

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

学生の頃は、大きな彫刻作品しかつくりませんでしたし
特につくりたいとも思っていませんでした。

ましてや作品を売りたいなんてこともありませんでした。
なにより、作品を売るとか売らないという話自体
周囲がなんとなく嫌がっていたようでした。

「大黒くんは作品を売りたいわけ?」って聞かれたこともありましたし
実際に、お金の話になると顔を曇らせる人たちが多かったのです。

しかし学校を出てから、周囲にどれだけアート論をぶちまけても
よくわかってもらえませんでしたし、「芸大病」にかかっているとさえいわれました。

芸術大学という閉ざされた環境と世間さまにはとても大きな乖離があるのだと
学校を出た後、強烈に感じていました。

「あれっ、なんかおかしいな、これではいかん」と思い始めて
「海外はどうなんだ?じゃぁ、実際に行ってこの目で確かめるか」と
一念発起したのがベルリンへ渡独する最初のきっかけでもありました。

いつまでも手元においておきたいと思う作品

いつまでも手元においておきたい作品をUte Essig(ウテ・エッシィヒ)
MEINS(マインス -私のもの-),2012, 33,5 x 24,6 cm (額装),
手漉き紙に刺繍, エディション 9/20
photo:Takayuki Daikoku
Daikoku collection

第二次渡独後の2012年夏ごろから、ベルリンのギャラリーの所属作家になり
個展やグループ展などに参加していましたが
ギャラリストや他の作家とは「作品が売れたんだ、やったじゃない!」
とか「今回は売れなかったよ、残念だったなぁ」とか会話の中に普通に出てきます。

マーケットといっても、よくニュースで取り上げられているような
ピカソの作品が何億円ついたとか、超お金持ちの人たちがオークションで売買するような
市場だけがマーケットじゃないんですよね。

若手作家の作品が数万円で売買されるのも
もっといえば物々交換でも成立すれば立派なマーケットなんですよ。

要するに金額が1円であろうが1億円であろうが
買い手と売り手が合意すれば、それは全てマーケットなんです。

そういう意味において
いくらであろうが、良いものは良いし、良くないものは良くないんだと思うんです。
それでも残っていくものは残っていくし残らないものは残らないのでしょう。

作品が売れるということは、購入者やギャラリー、そして作家にとっても喜ばしいことです。
作家やギャラリストは霞を吸って生活しているわけではありません。

普通に生活している人たちと同じように、
否、それよりも質素に生活している人たちが95%以上です。

お金はツールだとぼくは思うんです。

イギリスを代表する現代アートの作家、ダミアン・ハーストは
「お金は新しい扉を開くための鍵だ」と言っています。

彼は、超お金持ちの作家になっていますが、
そのことがどうこうではなく、
その意見には腑に落ちるところあるんです。

だってお金がないと生活はおろか、
交通費、光熱費、家賃だって払えないのは当然ですよね。
なにより制作する材料費だって捻出できなければ新しい作品さえできません。
それに、何かに挑戦することにだってお金がかかるのです。

作品にお金をかければ、良い作品が作れるわけではないと言われるかもしれませんが、
資本主義社会の中で人が動いて、何を創造するには
やっぱりお金がかかるんです。

今、こうしてブログを書いてるのだって
タダじゃありません。
ドメイン代、サーバー代、光熱費は最低かかるのです。
0円じゃないんです。

芸術とは何か?人生って何?彫刻って何?本物って何?って議論とても大切ですよ。
そしてどうすればいい作品がつくれるんだろう。

ぼくだって、そのようなことはずっと考え続けていますし
これからも考え続けていきます。

だから作家の思想や作品とマーケットの双方のバランスが
大切なんだと本当に思うわけです。

でもね、こことても大事なところですよ。

「ものを創作する作家にとって
嬉しいのは誰かが大切に作品を持ってくれること」
だと思うんですよね。

作品によってはギャラリーで購入したのち、
すぐにオークションかけて手放されるような作品もあると聞きます。
一部の人たちが作品の良し悪しではなく投機的な買い方しているのでしょう。
資本主義の元で、美術作品も売買されるのだから、
オークションにかけることは決して悪いことではありません。
けれども、購入して数週間もしないうちに手放されるなんて
なんだか凄い寂しさを感じるじゃないですか。

心をクスぐられて身銭を切って作品を買いたくなる。
そして手放したくない、いつまでも飾っておきたいと思われるような作品。

所有してくださった作品をずっと手元においてもらえること。
そして作品が残っていくこと。

それが作家が望む一番の作品の姿だと思うんですよね。

少なくともぼくはそう考えていますし
それが大前提にあってのマーケット云々なんです。

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

Author by gross-schwarz

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