作家として海外で生活したい人へ。ささやかな10個のアドバイス -ドイツの場合-

      2016/11/07

彫刻家の大黒貴之です。

これから書く10個のことは、ぼくが約6年半の時間をドイツで過ごし実感したことです。

その間、現代アートの作家としてドイツで活動し、
ベルリンのギャラリー、セミヨン・コンテンポラリー
ブランデンブルク州ハーフェルランド郡、
またペーター・トンプソン財団の人たちとパートナーシップを持ち
仕事を進めてきたうえで実感した事柄です。

ドイツで経験したぼくの人生の一場面にすぎませんが
これから海外へ出て活動を始めるという人へのご参考になればと思います。

外国生活

1.目標を設定する

海外へ出て生活をすれば、何かが起こるだろうというなんとなく論で動くのではなく
できれば何か自分の中で目標を定めて、それに向かっていく設定をすることをお勧めします。

なぜかというと、人生という有限の中で
一度しか持つことができないあなたの大切な時間やお金、
労力を全てその期間つぎ込むことになるからです。
楽しく過ごす時間はとても大切ですが、なんとなく過ごした時間は二度と還ってきません。
ちなみにぼくは、2001年第一渡独のこときは、
「語学力なし、コネなしの状態からベルリンで個展をする」ということが最初の目標でした。
参考記事:ぼくがベルリンに向かった理由 第一次渡独 2001-03年

2011年から2016年の第二次渡独では
「彫刻家としての作品スタイルを確立する」という目標を立てました。

それを実現するための具体的な行動として、
例えばコマーシャルギャラリーの所属作家になり個展を開催する。
そしてドイツ人のギャラリストと一緒に仕事をしていく。
自身の作品カタログを発行する。などの項目を決めました。

もちろんドイツに行った当時はそれができるかどうかはわかりませんでしたが、
そのイメージを持って行動するのとしないのとでは動きが変わっていたのではないかと思います。
参考記事:「はたして思考は具現化するのだろうか 」

2.お金の管理をしっかりとすること

ドイツではお金がなくなった時点で、滞在許可を取得するのがかなり難しくなります。
なぜなら勝手にやってきた外国人を保証する義務はドイツ側にはないからです。

自分の身は自分で管理して守る。
これが海外での鉄則です。

例えば、日本にいる間に当面の生活費の不自由がないよう貯金をしておいたり、
助成金を申し込んだり、また家族に相談するのもいいかもしれません。
人に迷惑をかけないで集めたお金にきれいも汚いもありません。
お金はお金です。
お金は自分がゴールへ到着するための大切な一つのツールなのです。

3.日本で培った人脈を途切れないようにすること

一生、海外の土地に住み、そしてそこに骨をうずめるのなら話は別かもしれませんが
いつかは日本に帰ることを決めているのなら
決して日本での人脈を切らないようにしてください。

最初のうちは「いや~、オレ海外でいっちょやってやるから
もう日本は関係ないんだよね」と思うかもしれません。
しかし、故郷とは離れてみて初めてその良さがわかるもの。
長く住めば住むほど、故郷への想いは募る傾向にありますし
ひょっとしたら帰国せざる得ない状況になるかもしれません。

今では、インターネットがありSNSやメールがあるのですから、
定期的にコンタクトを取り続けましょう。
ぼくはネットでこちらでの活動状況を発信し、
一時帰国時には、できるだけお世話になっている人たちに会うようにしていました。

4.やっぱり健康が一番

健康であることがなによりの資産です。

言葉も不自由で、土地勘もわからない場所で長期間滞在することは
知らず知らずのうちにエネルギーを消耗するものです。
疲れたときは、心身共にゆっくりと休みましょう。
参考記事:「彫刻家もフリーランスと同じ。とどのつまりは自己管理が大切です」

5.その土地に浸透していきましょう

例えば、ドイツに住むということはドイツ人社会に溶け込んでいくということです。
そのためには完璧になるのは難しいですが、ドイツ語の習得も必要ですし、
彼らとコンタクトを取っていくことが大切です。
日本人同士ばかりでつるんでいても、なかなかドイツ社会には馴染んでいけません。

6.この人は!感じる人がいれば、トコトンアタックしていきましょう

この人は自分の可能性を広げてくれると感じる人が見つかったら
トコトン、アプローチしていきましょう。
ぼくは2002年にベルリンで知り合ったドイツ人の作家(今はギャラリスト)と今でも交流しています。
彼がぼくにドローイングを教えてくれて、また作家としての可能性を広げてくれました。
2011年に彼はベルリンでギャラリーを開きますが、ぼくは何度も彼の下に足を運んで作品を見てもらいながら
良い作品、退屈な作品の指摘を受けて、今のスタイルを確立させていきました。
参考記事:「一人のドイツ人との出会いによってぼくの作家人生は変わった」

7.ドイツ人も日本人も同じ「人」です。

文化や価値観の相違はあるといえども、お互い同じ心を持った人です。
伝えたい事やしたいことをはっきりと言い合えるようにしましょう。
会話、文章、行動、作品・・・なんでもいいです。
なんとかして、自分はこうなんだという意思を伝えましょう。
自分の情熱を降り注いで。
大切なことはあなたの情熱ある意志が相手の心をつかむことです。

8.じっくりと制作に打ち込みましょう。

外国生活で遊び倒していたのではただ貴重な時間とお金が無くなっていくだけです。
(経験するという意味ではそれも大切なのかもしれません)
最初はいろんなところに出かけたり、新しい人と出会うことも大切です。
しかし、少しずつ周囲の雑音をシャットアウトできる環境を整えて制作に打ち込みましょう。
ドローイングでも小品でも大作でもいいです。
その間に作家としての自分のスタイルを確立させていくことが大切ではないかと思います。

9.用心には用心を重ねましょう

ドイツ語でコミュニケーションを取るのはただでさえ難しいのに
アクシデントが起きたときは、それに拍車をかけて困難なことになります。
自動車や部屋などの保険にはもちろん加入することを勧めますが
無用なアクシデントは起こらないに越したことはありません。
普段から用心には用心を重ねて。

10.小さな作品一つからチャンスをものにしていく

無名の作家がいきなり大きな展覧会を持つことなどはまずありません。
グループ展などに出品する小さな作品の一つひとつの積み重ねがチャンスとなっていくのです。
それが信頼となり、また次の展覧会につながっていきます。

 

外国での経験を持つことは自身の視野を広げる大きなチャンスになる

もちろん海外生活をすることは自己責任です。
しかし、それができる環境があるのなら是非、その五感で体感してほしいとぼくは思います。

旅行で見聞することも大きな糧になりますし
その社会に浸透していく経験ができる外国生活は
さらに自身の視野を広げてくれることになるでしょう。
参考記事:「海外渡航のススメ。よその家にもチョイトお邪魔してみてはいかが?」

もちろん、ぼくが上に書いたようなことが全てだとは思いません。
他にもっとすごい経験をしておられる方々もたくさんおられるのは知っています。

しかし一つ言えることは、異国の地で全力投球したあなたの時間やお金、労力は、
「人間力」を養う上で、将来必ずボディーブローのように
効いてくるとぼくは信じています。

何年そこに滞在するのかということよりも
「その地で何をするのか」ということが重要なのです。

Author by gross-schwarz

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