創造性の考察② -作曲するコンピューター、エミーの実験結果から-

      2016/12/01

彫刻家の大黒貴之です。

前回のつづきです。

以前、「AIの衝撃-人工知能は人類の敵か-」(講談社現代新書)
という本を読み、とても興味深いことが書かれていました。

今日はその書籍の中から特筆することをピックアップしながら
いつものように僕の意見を交えたいと思います。

 

音楽を作曲するコンピューター、エミー

人工知能と音楽-02
カリフォルニア大学サンクルーズ校のデビッド・コーク名誉教授が
開発したエミーと呼ばれるプログラムでとても興味深い実験結果をはじき出しました。

彼は、これまでバッハやベートーベンなどの有名作曲家が書いた
音楽をエミーに読み込ませてデータベース化し
それを再構築して作曲させました。

コープ教授がその作曲した音楽の中から、良いものを選び出しました。
そして、エミーによって作曲されたことを
聴者に知らせないときと知らせたときに分けてその音楽を発表しました。

その結果、知らせなかったときは、その音楽に感激、拍手喝采となり
知らせたときは会場は静まり返ったそうです。

人がコンピューターのように創造している?

この結果からコープ氏は、
コンピューターでもバッハやショパンのような
音楽を作り出すことできると考えています。

その創造プロセスは
「コンピューターが人のように創造するのではなく
人がコンピューターのように創造している」のだと彼は言います。

また「その音楽がよいかどうかは
音楽の内容よりも、それを聴く人の心の中にある」のだと。

その作品は、誰がつくったのか、どのような背景があるのか
などのデータを元にしながら、
人は体感していることをうかがい知ることができます。

参考書籍:「AIの衝撃-人工知能は人類の敵か-」(小林雅一 著)

駅に流れる若く偉大なヴァイオリニストの演奏

人工知能と音楽-03
2007年の初頭、
一人の世界的に偉大なヴァイオリニストが
ワシントンDCのある駅で覆面演奏家として
バッハの曲を数曲演奏し、
「どれだけの人がその曲を聴くために立ち止まるのか」
という実験がワシントンポスト紙によって行われました。

以前、ネット上でもこの話題が流れたので
ご存じの人もいると思います。

結果、ジョッシュア・ベルという音楽家が、
350万ドルのヴァイオリンを奏でた45分の間に、
その前を通りかかった人数は約2000人。

そのうち、立ち止まったのは6人、
約20人が投げ銭をして通り過ぎていったといいます。

ちなみにこのヴァイオリニストが直前に行った公演のチケットは
一枚100ドルで全て完売だったそうです。

芸術を体験するには場所が必要?

この実験は

「人は普段、あまりにも時間に追われて、盲目的になり、
周囲の美しいものを見過ごしていないだろうか」

「人の才能は、コンサートホールや美術館、
劇場など権威のある場所とは
異なる環境に置かれたときに、
その良さを気づいてもらえるのだろうか」

という問いを突き付けているわけです。

確かに、その実験の時間帯は、朝の通勤ラッシュで
先を急いでいる人たちが大半だったので、
音楽を聴く余裕がなかったということもあります。

しかし、
「そのヴァイオリニストの素性が誰かを
事前に知っていたらどうなっていたのでしょうか」

少なくとも、彼を囲むほどの人だかりは
できていたのではないかと僕は推測します。

 

蓄積されたデータを再構築したもの

人工知能と音楽-04
ぼくの意見に戻るのですが、アート作品の創造プロセスも
音楽と同じ構造になっているのではないかと考えています。

その作家が見聞してきたそれまでの過程で
インプットしてきたものを自分の中で
再構築してアウトプットする。

その接合がうまく成されていたならば、
それまでにない全く新しいものだと評価され
再構築が甘いとどこかでみたことがあるなと言われたり
甘すぎると、前回にも書いたデザイナーのように
盗作だと言われてしまうことになります。

次回につづきます。

Author by gross-schwarz

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