不安を抱えて作品をつくり続けるあなたへ

      2017/06/08

彫刻家の大黒貴之です。

生涯にわたって作品をつくり続けることは非常に困難なことです。

芸術学校というの閉ざされた空間の中では
誰もが同じような意識を持っています。
ですから、そのような人たちと食事をし酒を飲みながらでも
アートについて、また人生について話をしていれば
抱えている不安などは消えてしまいます。

学生にしてみれば学校の先生は権力です。

彼女/彼らが言っていることは正しいと思いますし、
真面目な学生ほど真剣に耳を傾けます。

しかし学校を出ると、それまで胸のどこかに
しまい込んでいた不安が一気に放出します。

「あれっ、何か学校とは違うぞ」と。

作品制作をつづけること

不安を抱えながらも制作する突進力

作家(アーティスト)になる志を持って学校を卒業した学生たちは、
5年後、100人中10人になり、それからまた5年後には半分になると言われています。

学校を出てから10年後には、95%の卒業生が作品をつくることをやめているというのです。

友人知人たちは就職するなり家業を継ぐなりして経済活動を始めています。

学校を卒業して作家を続ける意志が無い学生は、
会社に就職したり、中学や高校の教員を目指していきます。

周辺がそのように生活をしていく中で
作家を目指す人は、ほとんどの人に見向きもされないし、
売れることもない作品を制作していくわけです。

日本の場合、その作品の多くは貸画廊というシステムの中で
6日間、長くて12日間だけ公の場に出されて100~200人くらいの人に
作品を観てもらい自分の倉庫に保管されていきます。

個展といっても、貸画廊の使用料や制作費、運送、案内状の作成、
切手などの資金に加えて、作品の質量も必要になるため、年間1度できればいいほうです。

そういう時間を数年間も続けていくと
「一体なんのために制作をしているのだろう」と
猛烈な不安に駆られる瞬間があります。

つまり、自分の作品は社会と乖離され、
誰の役に立っていないことにハタッと気づいてしまうのです。

そのような不安を全く抱くこともなく、
最初から人を魅了できる作品を圧倒的に多く制作ができる人は天才です。

天才は10年に1人くらいの出現確率ですからほとんど参考にはなりません。

作品制作をするほとんどの人たちは、
社会的に接点がない作品をひたすらつくり続けていくことになります。

しかし、それでも続けていくと少しずつ理解者が増え始めて、
応援してくれたり何かしらの支援をしてくれる人が現れ始めます。

特にギャラリスト、作家、他ジャンルの仕事でも志ある人たちとのつながり、
それに友人、家族などのサポートはとても心強いものです。

ぼくはドイツでセミヨンさんというギャラリストと出会えたことは
作家としての大きな転機になりました。
参考記事:「一人のドイツ人との出会いによってぼくの作家人生は変わった

そのような人たちと出会い始めると
自分は一人で戦っているわけではないんだと感じることができます。

しかし、そこに至るまでの岩盤は非常に硬く多くの人が途中であきらめてしまいます。

作品制作は、一般的に流通している商品とは根本的に異なります。

それは人の役に立つものを制作しているわけではないということです。
もちろん資格があるわけでも免許があるわけでもありません。

ですので、目の前に立ちはだかる壁を突破していく突進力を
持っている人たちだけが作家として残り続けていくのです。

その過程には強い精神力や忍耐力、運、
そして作品をつくる衝動の芽生えがあるかなど様々な要因があります。

作品制作を続けていく2つのコツ

作家活動のモチベーションの維持には少しコツが必要になります。

1つ目は、先に書いたような人たちとつながっていくこと。

そういう人たちの存在によって、自分1人で戦っているわけではないことがわかります。
そしてそのような人は世の中に必ずいます。
ただ、その人たちに出会うためには、相応の時間とエネルギーが必要になってきます。

2つ目は、具体的な目標を持つことです。

作品を売りたい、美術館で個展をしたい、ファンを持ちたい、
社会に一言物申したい、モテたい・・・なんでもいいと思うのです。

小さな目標と大きな目標を両方持つのがいいと思います。
なぜなら、すぐに到達できそうな目標はモチベーションの維持につながりますし
大きな目標は、その地点にたどり着こうとするエネルギーにつながるからです。

そのようなものを求めると目標を達成したときに燃え尽きてしまうので
危険だという意見がありますが、ぼくはそれには違和感があります。

もしその目標に到達して燃え尽きてもいいのです。
あなたの作家としての役目はそれで完了したと考えればいいのではないでしょうか。

逆に、その目標に必ず達成しなければならないわけでもありません。

それでも続ける人は続けていきます。

作家は、誰に言われて始めることでもなく、
誰に言われてやめるわけでもありません。

進むべき道は全て自分で考えて、つくり続けていくものなのです。

作家を続けていく過程で、
たまらなく、そして耐えがたく重い不安が去来することがきっとあるでしょう。

しかし、それはあなただけではありません。

最後に1つ。

作家をしているからこそ出会えた人や共感できる同志を持てること、
何より作家でなければ味わえないような大きな感動を持つことができるのもまた確かなことです。

さて、ぼくも引き続き制作しますかね。

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

参考記事:「現代アートの作家として生きていく人、やめていく人

Author by gross-schwarz

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