ヘーゲルの「止揚」 世の中の現象は階段状に向上していく

      2017/11/23

模索時代だった1950-60年代とコンセプチュアル・アートのこと

ヘーゲル 止揚Photo credit: Guwashi999 via Visual hunt / CC BY

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

2011年に訪れたアートバーゼル42では、
ピカソやムーア、クリムトから現在の作家まで幅広く展示されていました。

その中でも50年代、60年代の作品が多く展示されていた印象を受けました。

多数出品されていた50-60年代頃の作品は、
ルチオ・フォンタナ、ジョン・チェンバレンなどのように
構成、色彩、筆跡、マテリアルなど作品だけで
面白みを感じることができる作品が多くありました。

日本人作家では、白髪一雄や山口勝弘など日本フルクサスで活躍した作家が
日本のギャラリーから紹介されていました。

60年代後半から70年代初めにかけて、コンセプチュアル・アート(概念芸術)が登場します。

このアート概念は、出来上がった作品よりも、作品のアイデアや完成するまでの
プロセスが重要であるというものです。「作品のコンセプトは?」と
問われることは、このコンセプチュアル・アートの文脈があります。
また忘れてはいけないのは、このアート概念の最初に系譜するのは
マルセル・デュシャンの泉ということになります。

以降、作品のテキストなしでは理解できない作品が多く登場していくことになります。

1960年代の時代背景は、
ベトナム戦争や中国の文化大革命、またフランスでは5月革命がおこり、
日本でも安保闘争など一連の学生運動が起こった時代です。

当然、これらの国際情勢や社会背景が、
作家に及ぼす影響はとても大きかったとぼくは考察しています。

第二次世界大戦で、世界中が混乱し
それぞれの国々が新しい価値観や方向性を模索していた時代だったのかもしれません。

ヘーゲルの概念「アオフ・ヘーベン(止揚)」

ドイツに住み始めた2011年当時は、
自身の作品スタイルをもう一度再構築するため
アクリル絵具を使った絵画やドローイングを描きながら模索する毎日でした。

そのようなときは、なかなか精神力がいるものですが、
次の階段を上るためのチャンスだったのかなぁと思えるのです。

ドイツの大哲学者ヘーゲルは、
「人の人生や歴史、技術の発展などは
右肩上がりに斜めに上がっていくのではなく、
階段状になって向上していく」のだと論じました。

平行線が続き、何かしらの反対の作用がぶつかって、
グンッと真上に上昇し、また平行線を辿る。

彼によると、全ての出来事は、その階段状の繰り返しなのだといいます。
平行線が続いた後の上がる瞬間のことを「止揚(しよう)」といいます。

止揚の前は、とても苦しくまた精神力がいる瞬間でもあります。

しかし、このようなときにこそ、
良い作品や良いアイデアが出てくるのではないかとぼくは考えます。

様々な訓練や練習、語学、人生の中での気づきや発見、
また混沌とする時代背景など。

平行線が続き、壁にぶち当たるときがどんなときにでもあります。
立ちはだかる「反」的なものと衝突した結果、新しい何かを発見することができるのはないでしょうか。

Author by gross-schwarz

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