TAKAYUKI DAIKOKU 人生はアートという名の想像力

【密室のインタビュー】ある作家の制作思考プロセスを覗いてみる

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

現代アートの作品をつくる人ってどんな人だろうと
疑問を持つことはあると思います。

彼女/彼らがつくる作品は
一般的に流通している商品とは異なるところあります。

大きく違う点は「利便性が無いこと」ということでしょう。

つまり一般商品のような「あったら便利だなぁとか、どうしても無いと困る」
といったニーズやウォンツがないということです。

そのような一般商品にはない要素を持つアート作品を生み出す
芸術家は制作においてどのような思考プロセスを辿るのでしょうか。

制作の思考プロセス

ある彫刻家へのインタビュー

A : インタビュアー B : 彫刻家

A:「表現者としての心構えを教えていただけますか」

B:「先ず、つくりたい衝動があることだと思います」

A:「衝動とはどういうときにやってくるのですか」

B:「マグマのようなものだと思います。
  沸々とこみあげてくるようなものです」

A:「つまりマグマのような激しい揺さぶりがあるのですか」

B:「ええ、それを吐き出さないと居ても立っても居られないような衝動です」

A:「吐き出さないとどうなるのですか」

B:「精神的に支障が出てきます」

A:「作品をつくるときはどのような思考回路になっているのでしょうか」

B:「最初の衝動が起点です。例えば、わたしの場合はドローイングを描いています」

A:「ドローイングってなんですか? 
  彫刻をつくるためのスケッチのようなものですか?」

B:「いいえ、わたしのドローイングはスケッチではなく、
  前兆、もしくは予兆のようなものです」

A:「前兆、もしくは予兆ですか?」

B:「作品生まれるずっと以前にある本質的なイメージです」

A:「ちょ、ちょっと待ってください。もう少しわかりやすく説明してもらえますか」

B:「ええ、集中して目を閉じると、瞼(まぶた)の向こうにモワッと 
  アメーバのようなものが浮かび上がってくるのです」

A:「そのアメーバのようなものを描き留めるのですね」

B:「ええ、ただそのイメージがいつ彫刻として現前するのかはわかりません。
  明日かもしれないし、1年後、5年後、それに生涯にわたってないかもしれません」

A:「先に制作において衝動があるかどうかとおっしゃられましたが、
  例えば、誰かから作品制作の依頼があったときはどうされますか? 
  衝動が来るまで制作をしないのですか?」

B:「理想的にはそうなりますね(笑)
  しかし、その場合は、例えば、依頼主との会話であったり、作品が設置される場所や環境、
  それにまつわる歴史であったりそのようなことが起点になってくるかと」

A:「つまり、それらの情報からインスピレーションを得ていくのですね」

B:「はい、そのインスピレーションが衝動につながり、
  作家の音色がそこにリンクしていくことで
  独特な空気感がその場所に生み出されるのでしょう」

A:「ということは、ギャラリーや美術館などで発表する作品と
  それ以外の場所に設置する作品の思考過程は少し違うということですか」

B:「ええ、少し異なると思います。パブリック(公共)ではない空間のほうが
  作家の音色がより色濃く反映されるでしょうね。
  しかし屋外でも作品と見事に合う場所や環境はあります。
  例えば、ロバート・スミッソンのようなランド・アート系の作家は
  その場所でしか表現できない作品を制作しています」

A:「衝動はどこからやってくるのでしょうか」

B:「現代社会への眼差しであったり、憤りや怒りであったり、問いかけであったり。
  もしくは生まれながらに持っているものなのかもしれません」

A:「つまり、誰に頼まれるわけでもなく 
  それらの衝動を表現しないと仕方ない人なのでしょうか」

B:「作品のテーマやコンセプトはもちろんあります。
  しかし、それ以前に、衝動に掻き立てられ何かを創造することによって
  心身のバランスを保っていることがわたしの根本にあるのだと思います」

後編「作家は作品を通じて何を共有しようとしているのか?-続・密室のインタビュー」につづく

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

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