Takayuki DAIKOKU 彫刻のない美術館

【フロー】ゾーンに入る時は、どのようなプロセスなのか?

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彫刻家の大黒貴之です。

 前回の記事で、
「程よい緊張感」について書きました。

アメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイは、
分野の異なる高度な専門家たちが、
いわゆる「ハイ」になっている状態を「フロー」と呼び、
ゾーンに突入している状態だと仮説を打ち立てました。

このフロー状態は、アーティストが制作する上で
どのような影響を与えるのかを考えてみました。


Photo by Aaron Huber on Unsplash

「易しすぎず、難しすぎず」挑戦と能力の絶妙なバランス

彼は、フロー状態になるには
いくつかの状況が発生しているとしました。
例えば、「挑戦と能力が絶妙なバランスを取っている程よい緊張状態」
「周囲の状況や雑音がシャットアウトされる」
「自意識が無くなり、心配が消滅する」
「時間の感覚が麻痺する」などのいくつかの項目を挙げています。

特に、挑戦とスキルのレベルが高い水準で
バランス状態を保っていることが大切だとし、
その集中力が持続できて、なおかつ
外からの邪魔が入らない条件が整った時に
フロー状態に入ることができるとしています。

チクセントミハイによるフロー体験を得る8つの構成要素
(ただしフローを経験するため
これらの要素、全てが必要というわけではない)

    1.明確な目的(予想と法則が認識できる)
    2.専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。
   (活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)
    3.自己に対する意識の感覚の低下、活動と意識の融合。
    4.時間感覚のゆがみ – 時間への我々の主体的な経験の変更
    5.直接的で即座な反応
   (活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
    6.能力の水準と難易度とのバランス
   (活動が易しすぎず、難しすぎない)
    7.状況や活動を自分で制御している感覚。
    8.活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。

また、チクセントミハイは、挑戦することと技術の
関係性をチャートにしています。

フロー状態に入るまでのプロセスとして、
対象への挑戦レベルは、
「不安→強い不安→覚醒→フロー」へと変化していきます。

作品を制作する上で、僕が大切にしている
「程よい緊張感」はこのプロセスと
非常に酷似しています。

新しい作品の制作前は、自分のイメージに向けて、
今の技術力を持って、アウトプットすることが
できるのだろうかという不安が去来します。

それでもイメージに突っ込んいくと
やがて高揚感を感じるようになり、
周囲の雑音や評価が気にならない心境になってきます。

僕が大切する作品の緊張感は
このような状態から発生するのだと考えています。
制作をする上で大切にしている緊張感ですが、
それは常に挑戦することと直結しているのです。

そして、作品がシリーズ化されて、
ある程度の予測が可能になってくると
それはコントロールされていくことになります。
この状態を感じ始めると僕は作業の手を休めたり、
また今あるシリーズは次のシリーズへ
変化したりすることになります。

チクセントミハイのチャートに従えば、
フロー状態からその先は、
「コントロール→リラックス→退屈→無気力」と続きます

そして、挑戦する勇気を持つことによって、
先に挙げた最後の「無気力」は、再び「不安」を覚え始めます。

作家の仕事は、
この「不安~フロー」の行き来を保ち続け、
またその状態を10年、20年、30年という
長い時間の中で継続していけるかどうかが
要になってくると僕は考えています。

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関連記事です

前回の記事です。制作において、程よいテンションをかけた
緊張感とリラックスのバランスが大切だと考えます。

作家が自分の仕事場を持つことはとても大事です。
その中は、外乱をシャットアウトでき、
また、作品や自分と向き合える非常に重要な
空間と時間を保つことができます。

ドローイング:Inverted drawing