大黒 貴之 彫刻のないアトリエ

【フォールド・ドローイング】日本語訳のテキストが出来ました

【告知】展覧会に出品します!FIND Your ART FOR CHRISTMAS:MARUEIDO JAPAN
詳細はこちらをご覧ください⇒ FIND Your ART FOR CHRISTMAS
【新作動画】ベルリンでドイツ人アーティストから学んだ、私のドローイングについて語ります

彫刻家の大黒貴之です。

2018年6月にベルリンのセミヨン・コンテンポラリーで
開催した個展「Folded Drawings / フォールド・ドローイング」の
テキスト日本語訳ができましたのでアップします。

当ギャラリーのオーナー、H.N.セミヨン氏によるテキストです。

少し長文になりますが、フォールド・ドローイングの
写真や動画と一緒に目を通していただければ大変嬉しく思います。

・・・・・

「フォールド・ドローイング」
2018年6月8日〜7月14日

2011年にギャラリーを創立して以来、当ギャラリーのアーティストである大黒貴之は、2017年春のグループ展「Penetrating Paper : Cut – Perforated – Folded…」において、フォールド・ドローイング作品を初めて紹介した。

以来、大黒はこの新しい創作分野 に以前にも増して集中的に取り組み、今後も見る者をあっと言わせる作品を創出するに違いない独自のフォールド・ドローイングの世界を創り上げた 。こうして今回初めて、最近の創作活動で生まれたまとまった数の作品を揃えることができた。 アートフェア「paper positions berlin」では、大黒のフォールド・ドローイングをギル・シャハーの作品と対峙させたばかりだ。

paper positions berlin 2018
paper positions munich 2018 with Gil Shachar by Semjon Contemporary

シリーズのメインとなる作品は、数多くの小さな正方形のフォールド・ドローイングで構成された180×283cmの三幅対「RGB」である。個展の招待状の内側を見ると、作品のサイズが見て取れる。そこには、 触感と質感が伝わってくるような光沢に包まれた大黒が作品の前に立つ姿が写っている。この作品は、遠くから見ると、菱形格子模様の浮き出し加工を施し、ニスを塗った革壁紙のようである。格子模様の線に当たる部分は、紙を折っていることが分かる折り目部分であり、 空間に立体的に浮かび上がる。 三幅対の線の色は一幅ごとに異なり、 左幅は緑、中央幅は赤、右幅は青である。そして、格子の線の色(red, green, blue)から、「RGB」という短い作品名の謎は明らかになる。

folded drawings takayuki daikoku
Folded Drawings “RGB”, 2018, Semjon Contemporary, Berlin

また、制作の最終段階でグラファイト鉛筆を使ったことにより、菱形の表面は革のような光沢を帯び、少しメタリックな輝きを放つ 。しかし、表面の全ての部分がこのように仕上がっている訳ではない。実は正方形の紙の中央には赤、さらに部分的に緑の下塗りが透けて見えるのだ。赤、緑、そしてメタリックなグラファイトの黒が、菱形の線の色に縁取られ、紙ごとに異なる 有機的なモチーフに強調されながら、もつれ合い、入れ替わる。大黒の抽象的且つ有機的なドローイングを見てきた者なら、遅くともこの辺で「RGB」が彼の手によるものであることに気付くだろう。大黒は、おそらく下塗りした色が乾かぬうちに、鉛筆で有機的なモチーフを刻み込み、グラファイト鉛筆でのドローイングの精緻さよりも、三幅対というこの作品の本質的特徴を重視した。そして、色が乾いた後、強弱差をつけてグラファイト鉛筆を塗り、複雑な輝きを放つ魚の鱗、あるいは革の壁紙を彷彿させるような、ダークな色合いが揺らめく表面に仕上げた。こうして、もとの紙は制作の過程ですっかり紙としての本来の特徴を失い、見る者が思わず手で触れたくなるような新たな素材へと変化した。人には視覚だけではなく他の知覚が備わっている。事実、「paper positionsberlin」の会場では、この作品の素材を確かめようと、 さっと手を伸ばそうとする人々をよく見かけた。

彫刻家の大黒が、(二人だけ挙げるとすれば)ウルズラ・ザックスやギル・シャハーといった当ギャラリーの他の彫刻家同様、紙を素材とした作品制作に取り組むことになったのは、実はごく自然の流れだと言えるだろう。フォールド・ドローイングという新たなジャンルの多様性は「RGB」に集約されている。また、その多様性は、同時に数多くの小さな作品においても様々な形で見て取ることができる。 まっすぐ水平に折り目をつけると段やジグザグ型になり、シャープな直角の線が浮かび上がるが、紙の端まではいかない、内側部分にのみ折り目をつけると、 非常にユニークな隆起と窪みの「ランドスケープ」が誕生する。大黒は現在、フォールド・ドローイングの世界が持つ可能性を探求している最中である。 そう、それはまだ始まったばかりなのだ!

ストリートサロンでの大黒の個展と並んで、隣接スペースでは内倉ひとみの個展「Lumière」も同時に開催されている。内倉もまた大黒と同様、紙ベースの作品を展示している。二人の作品は、芸術的アプローチの仕方こそ違いはあるものの、アートの素材、そしてインスピレーションの源として、紙がいかに日本文化に深く根付いているかを物語っている。

2018年5月
セミヨン H.N.セミヨン