アーティストは作品を残すことができない:後世に残る作品とはどのような作品か
彫刻家の大黒貴之(@takayuki_daikoku)です。
アート作品は、アーティストが死んでからも作品がこの世に残ると言われます。それでは、どのような作品が後世に残っていくのでしょうか?
石坂泰章氏、著書の「巨大アートビジネスの裏側 誰がムンクの「叫び」を96億円で落札したのか (文春新書) 」によると作品が制作されてから60年後が、その大きな節目になるのだといいます。最初に作品を購入した人がいる。そして、最初の所有者が亡くなった時に、その作品を他のコレクターや美術館が購入したいと思うかどうか。その時点がだいたい作品の制作後60年になります。
それでは、作品が誕生した時点で、それが良いのかどうかは、どのようにして知ることができるのでしょうか。
どのような作品が残っていくのかは、後世の人が判断する
Photo by Igor Miske on Unsplash
学生時代、大学の先生から「作品ができた時、それが本当にいい作品かどうかはとどのつまりはわからない。最終的にはそのアーティストの人柄が大事になってくる」と言われたことがあります。当時はその真意がよくわかりませんでした。
先般、世界の最前線で戦っておられる、あるアート関係の会社の社長の講演会に出席させていただきました。その社長が「アートマーケットで価格が高くなった作品が後世に残るかどうかはわからない」とおっしゃったので、私が「では、その作品のどのようなところを観て良いかどうか判断するのですか?」と質問すると「そのアーティストの人柄を観る」と言われた。
そういえば、私が20年前に大学で聞いたことと同じ内容だと思いました。
作家には、資格や免許がない。あるのは、作品と実績、あと人間力(人柄)なのだと私は考えています。
作品。
美的感覚の鋭い独創的な、
アートの文脈、
世に問いかける、
異質な…
あと、量。数稽古が必要。
量が増えれば必然的に質も上がる。
ただし集中しながら。
実績。
今までにどのような足跡を刻んできたか。
それは信用を測る1つの指標になる。
人間力(人柄)。
作家自身から滲み出る凄みや魅力。
人間力。
それは人から人に電波していき、良縁になっていく。
誰に発見されず、誰にも見てもらえない作品が残る可能性は低い
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後世にも残る作品とは、先の3つの要素がリンクし、かつ、長い時間の圧力に耐えることできた強度のある作品と言えましょう。良い作品は、時間が経てば経つほどに味わいが深まる。
多くの良い作品や時間の圧力に耐えてきた本物の作品を観ている人、いわゆる「目の肥えた人」は、作品の良し悪しが直観で分かるのだといいます。
アーティストは、自分が美しいと信じる作品を生み出し一つ一つの発表の機会を大切する。後は、人間力で勝負する。
その作品が本当に良いのかどうかがわかるには長い時間がどうしても必要になります。
つまり、現時点ではわからないというのが本当のところなのだと思います。ただし作品を発表することなく、アーティストのスタジオにひっそりと眠っている作品はほとんどの確率で残っていくことはないと思います。
なぜなら、作品を後世に残していくのは、アーティストではなく他者であるからです。
参考書籍
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