創造性の考察① -デザインと現代アートの表現プロセス-

      2017/11/23

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

人が何かを創造するときには
どのようなプロセスを辿るのでしょうか。

クリエイティブな仕事をする人たちは
白いキャンパス、白い紙に、
或いは彫刻の素材を前にして
マニュアルも何もない状態から
それらを作品に仕上げていきます。

そのアイデアの源泉はどこにあるのでしょうか。

 

オリジナルって何だろう

デザインとアートの境界-1
学生時代、作品を制作する際に
オリジナルをつくれと言われることがしばしばありました。

「芸術作品は何もないところから、創造するものだ」
という考え方ですが、
これって、不可能なことなんじゃない?
って僕は思います。

なぜかというと、
人は、生まれてから
五感を通じて脳内にインプットされたデータを
再構築してアウトプットしているにすぎないと考えるからです。

だから、白い部屋に閉じ込められて、
なんの情報もなくその人が成長していけば
はたして、どうなるのでしょう。
想像するだけで恐ろしくなります・・・

インプットしたデータを
引き出してくることや最終的に選択決定すること
もっとも繊細なのはどのデータとどのデータを組み合わせて
新しいデータに組み替えることができるか。

そのような行為がセンスということになるのだろうと思います。

それをアウトプット(表現する)ために
必要な技術は練習に練習を重ねる必要があります。

しかし、現代アートの世界では、自分がそれをつくるのが無理なら
そのような技術を持っている職人さんに依頼して、
アイデアを具現化してもらうことは十分に可能ですし、
今では当たり前のように行われていることです。

 

引用しながら、再編集するのがデザイン?

デザインとアートの境界-3
少し前に東京オリンピックに使われる
エンブレムのデザイン盗作問題がありました。

世間では、大きくメディアでも取り上げられて
社会問題にもなり、
結局、そのエンブレムの使用は却下されることになりました。

テキスタイルデザインの業界で50年以上
仕事をしておられる、あるベテランデザイナーの先生から
「デザインの世界は引用の世界である」
と以前に教わったことがあります。

だから盗作まがいのことなどはよくあることだし、
中には平気で、他のデザイナーが考えたものを
自分が考え出したデザインだという人もいるそうです。

デザイナーからアーティストへ

60年代から活躍し始めた横尾忠則氏はデザイナーでしたが
80年代にはいってから、「画家」という言葉を使いだし
グラフィックデザイナーから画家になりました。

平行して、日本では80年代にパルコ文化というのが台頭してきて
デザインとアートの境界線が曖昧になってきます。

アメリカでは、60年代にアンディ・ウォーホールが登場し
シルクスクリーンの技法で、作品の大量生産を実現しています。
ちなみにウォーホールは、デザイナー出身でした。

先のベテランデザイナーの方は
「デザイナーはクライアントの要望を満たすために
自分が持つ多くの引き出しの中から最も良いと
思われるアイデアと技術を提供する職人なんだ」とおっしゃっていました。

 

現代アートの世界も、もはやコピーの再編集なのか

デザインとアートの境界-2
現代アートの世界でも
80年代から、シミュレーショニズムという考えが
ポストモダン思想を背景に出てきました。

「現代社会の中で、オリジナルなんてもうないよね。
だって、みんな既存イメージの焼き直しじゃない。
だから、コピーのコピーのコピーがオリジナルになるんだ!」

「だから、アート作品も、既存のイメージをコピーして
再編集してアウトプットしたらいいんじゃない?」
っていう考え。

そこから、シンディ・シャーマンやリチャード・プリンス、バーバラ・クルーガー
日本からは森村泰昌氏などが登場してきます。

もちろん、このシミュレーショニズムの前兆として、
ウォーホールやリキテンシュタインなどが旗手となった
50年代後半~60年代にかけてのポップ・アートがあります。

デザインとアートの違い

これまでの流れを見ると
データをインプットして、再編集して、
アウトプットするというプロセスは
もはやデザインも現代アート世界も
それほど変わらなくなってきているのではないかと。

両者の違いは
デザインはクライアントの要望に内容を合わせていくのに対して
アートは、作家の主張や意見を表現したり、
まだ誰も見ていない、或いは気づいていない世界を発見する行為
ということです。

よく言われるように機能美とか実用性が兼ね備えられているのがデザイン、
そうじゃないのがアートという意見もその一環です。

Author by gross-schwarz

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