WORKS

巻/Coil

幼少の頃、琵琶湖、河川、自宅周辺にある田んぼでよく遊んだ。自然の中に入っていくと、さまざまな生き物や植物が目の前に現れる。子どもの頃にインプットした情報は、その後の人生に大きく影響を与えるもので、私の記憶や体験もまたその1つだと言えるのではないかと感じている。木、荒縄、和紙。学生の頃、作品をつくる際、極力自然の素材を使うことに専念していた。特に荒縄は、父親が作っていた田んぼから成った稲穂の風景の影響であることは間違いない。

何かの壁に当たってもがいているとき、奥琵琶湖に赴くことがしばしばあった。幼少の頃に遊んだ琵琶湖を山の上から俯瞰的に見たり、靄がかかる水辺を眺めたりすると湖の中に包み込まれるような気がして、自分の悩みの小ささに気づかされた。

「部分は全体を成し、また全体は部分を成す」

私の作品には、このような自然の影響を下に形成された有機的な彫刻が多くみられる。自然の構造を観察するとシンプルなフォルムの集合体が、全体としての個を形成しているようである。俯瞰的にみるとその全体さえも、さらに大きな全体の中の一部であるように映る。自然のあらゆる存在物はコインのような表裏一体で形成されているようである。否、常に両義が絡み合っているが故に、成り立っているのかもしれない。

Coil
1998- 1999
木・荒縄
写真: DAIKOKU Takayuki

CATEGORIES

彫刻