ドローイングとは何か?作品の本質的特徴を表す前兆であり、新しい領域を見つける手がかりになるもの
彫刻家の大黒貴之(@takayuki_daikoku)です。
以前、日本で展覧会を行ったときに「ドローイングってなんですか?」という質問を多々受けました。ドローイングは日本語で「素描」や「線画」と翻訳されています。ドイツ語ではツァイヒヌング、フランス語ではデッサンとなります。私がドローイングについて知ることになったのは2002年、ベルリンで知り合ったH.N.セミヨンというドイツ人アーティストに「君は彫刻家なんだから、ドローイングができたほうかいい」と言われたのがその切っ掛けでした。
Drawings, 2016, Friesack of Brandenburg in Germany, photo: Takayuki Daikoku
私のドローイングは、作品をつくるうえでの図面のようなものではない
グループ展に出品するため、ベルリン市が管理運営をしている「ビルトハウアー・ベルクス・シュタット/彫刻家工房棟」で作品を制作していた時に、そのドイツ人アーティストと知り合いました。彼が私の作品を気にいってくれて、彼のアトリエ兼プロジェクトルームに招待してくれました。そこから定期的に彼の下に足を運ぶようになりドローイングのレッスンを受けることになります。
「ドローイングは作品のスケッチじゃないんだよ。作品の新しい領域を発見するための機会になるし、特にスランプに陥ったとき、ドローイングをすることによっていち早くそこから脱出することができるんだ」という彼の言葉は今でも心に焼き付いています。
2011年にドイツに再び渡った時も作家としてのスタイルを再構築するために徹底的にドローイングをしました。その中で私が「ドローイングってこういうものなのかな」と気づいたことがあります。ドローイングは、作品のためのスケッチや図面のようなものではなく、作品が姿を現すずっと以前にある「前兆」もしくは「予兆」のようなものだと。またセミヨンさんは、ドローイングを「作品の本質的特徴」だと論じています。
彫刻をつくる際にどのような形にして、大きさはどれくらいで、どのような素材を使おう。というのは、作品のイメージスケッチです。私が考えるドローイングとは、作品ができるもっと以前にある何かモヤモヤっとしたイメージでそれがニュルッと出てくる感じの生き物のような存在です。つまり、彫刻などの最終形の作品が生み出されるもっと根源的で原始的なものです。そのドローイングは、何日、何か月、何年後の作品にどのようにつながるのかわかりません。けれども、それらは将来つくる作品の伏線になります。「あの時のドローイングが、この作品につながったのか!」、数年後のある日に、そのときつくった彫刻と最近ドイツで描いたドローイングが同じ場所で展示されていたら、とてもカッコいいと思います。
またの私のドローイングは一点だけを見るより、いくつかの連続体もしくは集合体にして見ると何かしらの意味が現れ始めます。それらは、暗喩されたものの集合体である諷喩(ふうゆ・アレゴリー)と言われるものです。
私のドローイング
O.T -無題- (SC15-2011), 2011, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, private collection / 個人蔵(ベルリン)
O.T -無題- (01-2016), 2016, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, photo : Takayuki Daikoku
O.T -無題- (02-2016), 2016, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, photo : Takayuki Daikoku
O.T -無題- (10-2016), 2016, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, photo : Takayuki Daikoku
O.T -無題- (12-2016), 2016, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, photo : Takayuki Daikoku
O.T -無題- (23-2016), 2016, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, photo : Takayuki Daikoku,
private collection, Japan
O.T -無題- (27-2016), 2016, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, photo : Takayuki Daikoku,
O.T -無題- (34-2016), 2016, 29.7×21cm, graphite on paper / 紙に鉛筆, photo : Takayuki Daikoku,
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