TAKAYUKI DAIKOKU 人生はアートという名の想像力

個展「CERES/ケレス」に想うこと

彫刻家の大黒貴之(@Gross_Schwarz)です。

MARUEIDO JAPANで開催された
個展「CERES/ケレス」が終了した。

この展覧会は、僕にとって非常に印象深く、
濃い時間の連続だった。
また、東京での初個展であり、
ドイツから帰国後の初個展でもあった。

約3週間の期間で多くの方々に
作品を観ていただくことができた。
いくつかの作品も行先が決まり、
作家として本当に嬉しく思う。

実は、東京で個展をしたいと最初に思ったのは
2006年頃だったと記憶している。

自分の声が相手に届くまでには、
タイムラグが発生することがある。
また自分の意志とは異なる形でそこに届くことがある。

そのようなことを改めて想う機会になった。

view of CERES, MARUEIDO JAPAN, Tokyo, 2018, photo: Ken KATO
個展「CERES/ケレス」MARUEIDO JAPAN・東京
Photo:Ken KATO

ドイツ経由でつながった12年越しの個展

実は、2006年頃から東京への移住を考えていたことがあり、
当時、必死になって資金を貯めていた。
作家の友人知人たちに相談すると
関西でもっと地盤固めをするべきだと反対されていたが
東京で作家活動をしてみたい気持ちが強かった。

ところが2007年に父親が急逝し、
東京への移住計画は断念せざるを得なかった。
1年間は喪に服し、当初はその先どうなるのか
全く予想ができなかった。
目の前の大きな存在が突然いなくなったことや
長く故郷を離れていたため現状がわからないまま
実家を引き継いだ僕にとって一体どうすればいいのか
検討もつかなかったことを良く覚えている。
頭の中は真っ白だった。

しばらくして中学校の美術講師のお誘いなどがあって、
その仕事に従事しながら作家としての模索が続いた。
同時に2001年に初めてベルリンへ渡ったことが
再びよみがえってきて
またドイツに渡って勝負をしてみたいという
気持ちが高まってきたのもこの時期だった。

父親の突然の死を目の当たりにして
人はいつでも死ぬものなのだと
強烈に実感したことが大きな原動力の1つにもなった。
年齢的にも、もうギリギリだったように感じていた。

2011年4月、再びドイツに渡った。
2002年にベルリンで知り合った
H.N.セミヨンというドイツ人作家に会えば、
そこからチャンスを切り開いていくことが
できるでのはないかという希望だけが頼りだった。

それと作家としての「自分の音色」を出せること、
そしてドイツで個展などを開催し、実績を持つこと。
それが彫刻家になるために必要なことだと強く感じていた。

それから2016年の夏に帰国するまで、
さまざまなことがあったが、
ベルリンやブランデンブルグ州などで
多くの展覧会に参画することができた。

その5年半の間には、
多くの日本人とも知り会うことができた。
今回の東京での個展のきっかけは
ドイツで知り合った方々からつながっていったように思っている。

日本に帰国してから、仕事場を構えたいと思い、
父親が建てた農機具小屋を改装して2017年3月にオープンした。
特に看板を掲げることもなく、数か月黙々と制作を進めていた。
その間、ほとんど作品は動かなかったが、
2017年に制作した作品は今年ほぼ全て
公の舞台に出ることになった。

僕が東京で個展をしたいと願ったことは
ドイツという遠い異国の地を経て12年越しの実現となった。

2回の渡独で合計で約6年半の時間。
そのドイツでの時間は、今の伏線のようになっていたように感じている。

ドイツへ渡る前は「ドイツに行ってどうするの?」とか、
帰ってきてからは「ドイツのことはどうでもよい」
などと言われたこともある。

しかし、これだけははっきりわかっている。

もしドイツでの時間がなかったら、今の自分はない。

・・・・・

今年の7月は異常な暑さが続いている。

日が暮れ、ようやく少し涼しい北風が入って来る仕事場。

制作をしている作業台から外の田園を静かに眺めている。

今回の個展での時間や知り会えた方々、
また、これまでのことや多くの出会い。
それらを反芻しながら、
何とも言えない人生の奥深さを噛みしめている。

Alles Gute! (アレス・グーテ!)

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