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彫刻家の大黒貴之(@takayuki_daikoku)です。

2011年にドイツへ渡ってから約1年半後、ベルリンのセミヨン・コンテンポラリーで個展を開催することができました。

現地の環境、文化、デザインなどが近江の自然の影響を受けた有機的な彫刻フォルムに上書きされ、私の作品は、論理的、数学的な美を取り入れた表現言語へ昇華されました。

2013年に行われた個展「renmen -ununterbrochen-」の風景です。タイトルを日本語にすると「連綿-途切れることなく-」となります。

個展「連綿 – ununterbrochen」(彫刻・オブジェ・ドローイング)2013年 Semjon Contemporary Berlin

 
 
 
 
 
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以下、展覧会のレヴュー:筆者:H.N.セミヨン

「連綿 – ununterbrochen -」は、ハーフェルランド郡ラーテノウ市在住の日本人彫刻家、大黒貴之がセミヨン-コンテンポラリーで行う初めての個展である。

この作家の起点はいつも木という素材である。まだ樹皮が着いたままの木の幹やがっしりした枝を使い、それを独自の”原型”に切り分けていき、さらにそれらを組み合わせてあたらしい形を造り上げる。それから和紙と柿渋(下記の酵素から作られる茶色の天然着色液)で手を加えていくのであるが、その過程で形と内容をどのようにするかが決められていく。そしてその結果、自然の単なる模倣ではない蕾、花、果実が、抽象的で符号によるメタファーのようなものとして表されている。

 
 
 
 
 
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彼は、自然と人の手に成ったものを繋ぐという日本の伝統を踏まえていて、我々に禅の庭園を思い起こさせる。しかし、そこで彼は自身の表現言語をはっきりと示し、伝統を踏まえながらも、それから独立した独自の言葉を見つけると云う新しい文脈の中に自分を位置づけている。自然の中にある形を取り上げても、それを単に再現するのではなく、常に変形し再編成している。それにより、文化による制約を受けない普遍的な関連付けを可能にしているのである。彼の作品は慣れ親しんだものだという感じを与えると同時に、異質だとも感じさせる。

 
 
 
 
 
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ドローイングは、自然から借りてきた、または彼がそう解釈した自然の形の抽象的符号を思わせる独立した作品であるが、立方体の鉄枠の内やテーブル/棚のような台座の上に展示された彫刻とそれらドローイングの間に生じる緊張感の場となった展覧会は、一種独特に構成された庭園を散歩するような感じを訪れる人に与えるのではないだろうか。

美術史上で問題となった彫刻と台座の相関関係の扱いにおいても、次のような側面がより豊かさを与えている。それは、人の手になる個々の形が、さらに大きな(やはり形成された)全体の文脈の部分をなしている日本庭園の歴史とその受容を示唆していることである。

空間を大きく占め、高さを強調した台座の構築は、また、住居のような親しみ易さと機能的な冷たさという相反する感じを同時に与える空間であると受け止められるかもしれない。ここでさらに新しい広がりが展開し、想像の中での庭園は他の位相へと運ばれ、平面上で配置されたものが高さという次元でも仕立てられていることにより、踏み均された”ものの見方”から離れて新しい可能性を見出す道が示されているのである。

「連綿 – ununterbrochen -」は、生成と消滅、破壊と再建が永遠に続くサイクルのメタファーとして理解することもできる。

ベルリン 2013年6月

フィリップ ツォーベル / H.N.セミヨン

翻訳 藤江ヴィンダー公子 

 
 
 
 
 
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↑こちらはドローイングの展示風景です。

この個展を機にして、その後、グループ展、アートフェア、ブランデンブルグ州ハーフェルランド郡の野外彫刻展へとつながっていきます。


「(ベルリン日刊紙)ターゲスシュピーゲル 2013年8月10日 室 内 園」

またこちらの個展はベルリンの新聞ターゲスシュピーゲルでも取り上げられました。

ギャラリー “セミヨン コンテンポラリー” の大黒貴之展

オープニングに花を! 大黒貴之は自作の彫刻の横に華奢な挿花を置いている。この日本人作家にとって、ギャラリー セミヨンコンテンポラリーでの個展は初めてのものであり、あたかもそれに感謝の意を示すかのように、彼は、オブジェ、枠、花、海藻のような植物、果実、など、独特で包括的な作品の構成をしている。

ただし、これらは総て自然の素材である木で作られているのである。1975年(原文のまま)生まれのこの作家は、幹や太い枝をシュールレアリズムのオブジェを思わせるような、個性的で繰り返し現れる原型に切り分けている。和紙と茶色味を帯びた着色液で簡単な素材を作品に仕上げるのだが、これによって大黒は、奇妙な、そして同時に人を惹き付ける室内空間を造り上げている。

部屋と庭と若木箱と抽象的彫刻の混合とでも云おうか。選ばれたドローイングがインスタレーションと共に展示されていて、ここでは決して偶然に任せるようなことはしていないことが分かる。それとは反対に、作品の与える脆く仮初めだという印象は、綿密な準備によって作られたのである。

この作家には、彫刻のアンビバレントな性質についての熟考がどうしても避けられないのだ。彫刻が倒れることなく、どのように空間を占めるか、どれくらいの量感になるのか、理論的にはどこまで広げられるか、等々。ここで大黒は、ブランクーシの作品「無限柱」への高い評価を示している。展覧会のタイトル “連綿 – 途切れることなく” は同じ方向を示しており、生成と消滅をテーマとしているのである。

Author : Christiane Meixner / クリスチアーネ・メイキシィナー
翻訳 藤江ヴィンダー公子 


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