アーティストのセルフブランディングについて考える:誰がアート作品に価値を付けていくのか
彫刻家の大黒貴之(@takayuki_daikoku)です。
「だいこくさんもね、自分で自分の作品の評論をすればいいんだよ」
いつの日だったか、現代アートの評論家と名乗る人からそのように言われたことがあります。じゃあ、アート界の評論家の仕事とは一体なんなのだろう?と考えたことがありました。ごく稀にアーティスト、キュレーション、評論、プロデュースなど1人で何役も行うアーティストがいることもまた確かなことです。
もう一方で、ある彫刻家の方からこのように教わったことがありました。「評論家は価値の無いものに価値をつけていくのが仕事の1つだ」と。
今回はアーティストのセルフブランディングについて考えてみます。
アーティストはどこまでブランディング活動をするべきなのか
セルフブランディングという言葉が出てきてもう久しくなります。昨今、あらゆる業種でフリーランスが増えてきて、個人でもブランディングをすることが重要だと言われています。その人の活動を世の中の人に知ってもらうために広報宣伝は必要ですし、インターネットの登場でそれが容易にできる時代になったのですから出来る人はドンドンやっていくほうが良いと私は考えています。
ただセルフブランディングはある一定のラインまでは到達できるけど、その後はどうしても「第三者」つまりフォロワーが必要になると思います。かつてマルセル・デュシャンが言ったように、「価値」というものは一人だけで形成していくものではなく、第三者の創造的な介入が必要になってきます。特に、最初の強力なフォロワーの存在は大変重要だと感じています。
そのフォロワーとは、アートワールドの中で言うならば、ギャラリストやアートコレクター、キュレーター、評論家などアート作品へのバリューメーカーとなります。もちろんアーティストを支えてくれるサポーターや家族、鑑賞者たちの存在も大切です。
アメリカの現状アートのアーティストはスモールビジネスのオーナー
Asia Society Japanで行われたこちらの「Art for Breakfast 2021: Art World in Tokyo Through the Looking Glass」というプレゼンテーションを拝見しました。日本の現代アート環境の現状を紹介しながら、日本とアメリカのアーティストの比較も紹介されています。その中でアメリカの現代アートのアーティストのほとんどは、自分はスモールビジネスのオーナーであるという認識を持っているともありました。とても参考になるプレゼンテーションです。
1人でできることには限界があります。自分には何ができて、何ができないのをよく知り、できないことは信頼できる第三者に委ねることもまた大切なことなのかもしれません。
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