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彫刻家の大黒貴之(@takayuki_daikoku)です。

ドイツに滞在して制作をしていた頃、ブランデンブルグ州フリーザック市の町外れにあるスタジオで制作をしていました。そのスタジオについて、写真とテキストで紹介します。ドイツ時代のスタジオのお話です。


「年が明けてからも、いつもと変わらない制作の日常が続いている。僕にとって仕事場の空間に「居る」ことはとても大切な時間である。その感覚は特に2011年からのドイツ時代に培われたものなのかもしれない。


フリーザックの最初のアトリエ

ラーテノウに引っ越してきた当初は右も左もわからない街で、どこにアトリエがあるのかもわからない状態だった。木くずが出る大きな彫刻をつくることはできないので、最初は自宅の一角を使用してドローイングやタブロー、もしくは小さな彫刻をつくっていた。

ドイツの賃貸用の部屋には基本的には何もない。ブランデンブルグ州では、キッチンもないので基本的に自分たちで取り付けをするか業者に頼むしかない。壁にペンキを塗ったり、自分でできることは、極力DIYするのがドイツでは当たり前のことなっている。

僕は自作することにはほとんど抵抗がなかったので、むしろ一つずつ部屋の風景が変化していくのが楽しくもあった。


2012年夏、フリーザック市の現場事務所の納屋の一角を使わせてもうらことになった。

それから1年半くらいが経った2012年の夏頃、ラーテノウ市の観光課の主任さんにフリーザック市という人口2500人くらいの小さな町のはずれにあるアトリエを紹介してもらうことになった。最初のアトリエはフリーザック市が管轄している環境課の現場事務所の一角の納屋を使用していた。

夏場はとても気持ちの良いドイツだが冬の寒さと曇天がつづく日は僕にとってはとても厳しかった。暖房が部屋の中を回っているだがそれほど効いていなくて、とにかく寒かったのを覚えている。ラーテノウの自宅から片道30km、25分ほどのアトリエまでほぼ毎日通っていた。

道中の広大や畑や森の中を抜けていく。四季の風景が移り変わる。どこまでも続く広い夏の空と雲はジョジョの奇妙な冒険の背景描写にそっくりだった。一日中晴れない冬の霧。まるで映画「ミスト」のようだった。晩秋、広葉樹の葉が、森の中を金色に覆う景色は絶景だった。そのような景色が今も鮮明に残っている。

やがて、最初のアトリエは、2013年に隣の家具工房が買い取ることになった。その代わりフリーザック市が向かい側にある多目的ホールの一部を借してくれることになった。向かい側に公園がある。


2013年に向かい側にある多目的ホールの一角に移ることになった。

普段はほとんど使用されていなかったが、年に数回、街のイベントやロックフェスティバル、ドイツ中を回っているサーカスが開催されていた。フリーザックの仕事場で、夏の心地よい日も、ドイツの暗い厳冬の日も制作を一人黙々と行っていた時のことを思い出す。

フリーザックで制作をしていたのは2012年夏~2016年夏までの約4年間。不安と希望の中、ひたすら作品と自分に向き合うことができた時間だったように思う。しかし、この時間が今の作品スタイルのベースになっていると感じている。

フリーザックの4年の間にはドイツ人や日本人に方々に訪問していただける機会があった。ベルリンから、車、もしくは電車で1時間半くらいはかかる場所であったにもかかわらず訪問くださったことはとても嬉しかったし、またその時の風景はなかなか忘れがたいものになっている。」


2回目のアトリエ。2015年頃。


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