コンセプチュアルアートは脳内で完成するの? コスースの3つの椅子

      2016/12/28

彫刻家の大黒貴之です。

現代アートって、わからないという言葉をよく聞きますが
歴史や作品背景を知れば、このアートジャンルも面白いんですよ。
ということで今回はコンセプチュアルアートのお話をしますね。

コンセプチュアルアートは1960年代に登場した動向で
抽象表現主義、いわゆる「絵画のための絵画」の最終形と言われる
ミニマル・アートに反発したアート概念です。

それまでの絵画や彫刻などの表現技法とは異なる手法を用いて
コンセプトやアイデアを強調した作風であると言えます。

その代表作家ともいえるジョセフ・コスースの作品を今回は取り上げます。

コンセプチュアルアート コスースの3つの椅子

ジョセフ・コスースPhoto credit: La case photo de Got via VisualHunt / CC BY

この作品は、ジョセフ・コスースが1965年に発表した
「1つの、そして3つの椅子」という代表作で、
コンセプチュアルアートの先駆的な作品だと言われています。

展示されているのは、本物の椅子、写真の椅子、椅子の定義が書かれている文章です。

一見だけでは、よくわからない作品だと思います。
いわゆる「なんでこれがアートなの?」になってしまう部類の作品です。

しかし、よくよく鑑賞してみると
椅子は本来座ることでその機能を保つのですが、
ここで登場する椅子は「写真の椅子」であり、
「辞書に書かれた文章の椅子」であり、
また本物の椅子でさえも
「美術館に展示されているため座ることができない椅子」である
ということがわかります。

同時に、「椅子という概念(イデア)」が
頭にパッと浮かぶことになります。

鑑賞者がその事実に気づいたときに、
「あれっ?椅子って一体、どういうものなのだろう」
と頭の中がグラグラする感覚を覚えることになるのです。

また、ジョン・レノンの妻であるオノ・ヨーコも
コンセプチュアルアートの代表的な作家です。

ぼくがよく覚えているのは、
紙の中央に水平線が一本、描かれている作品です。

よく見ると、その線の下に
「この線は、円の一部である」という文字が。

そうすると
「あれれっ?これって直線じゃなくて円だったの!」
って気づくことになるわけです。

このように、作品自体が発する何か感覚的な、
或いは感情的なことを提示しているのではなく
「作品に対するアイデアやその作品がつくられたプロセスにこそ
意味があり、その過程が美しいのだ」
というのが
コンセプチュアルアート、つまり概念芸術と言われるものなのです。

またコンセプチュアルアートが登場する以前に
マルセル・デュシャンの泉がその布石として存在していたことを知ると
さらに造詣が深まるのではないでしょうか。

このコンセプチュアルアートは、
今日では、現代アートの本流の一つになっています。
しかし、コンセプチュアルというだけに
作品に対しての言葉(コンセプト)が必要になるため
作品の制作プロセスやそれに込められた意味を知らないと
どうしても難解になってしまうことも否めません。

コンセプチュアルアートのまとめ

1.1960年代にミニマル・アートに反発して登場したアート概念。
2.実質的な作品自体に美しさを求めているのではない。
3.作品に対するアイデアやその作品がつくられたプロセスにこそ意味がある。
4.故に概念芸術と言われる。
5.しかし、作品がつくられた背景を知らないと難解になってしまう。
6.マルセル・デュシャンの泉がコンセプチュアルアートの源流である。
7.目下、現代アートの本流の一つになっている。

参考文献

Author by gross-schwarz

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